開催日時 2024年5月10日(木)18:30~20:00
参加人数 16名(飯田橋セミナールーム参加13名・オンライン参加3名)
五十嵐久 日本エグゼクティブコーチ協会(JEA)会長・(株)コーチビジネス研究所代表取締役の著書『コーチング思考』出版記念講演が行われました。
講演の後は参加者が、会場3チーム、オンライン1チームに分かれ、「グループディスカッション」が実施されています。同著作108ページの「あなたへの質問(3つ)」を、参加メンバー一人ひとりが、自分への質問として受けとめ、各自が考えた答えを発表し合う、という内容です。
廣器会メンバーは、いずれもが経営者ということもあり、密度濃い、刺激的なコミュニケーションが繰り広げられています。
多くのメンバーから、「気づきを得ることができた」という言葉が返ってきました。
【『コーチング思考』出版記念講演】
このような機会をいただき、改めて感謝申し上げます。
この本を書いた目的は、中小企業の支援という仕事を長くやってきて、経営者の方にコーチング的な考えを身に着けていただくと、ご自身はもちろんのこと、社員の方々へのサポートに大変役立つということがありますので、著した次第です。
前作の『コーチング・ビジネスのすすめ』は、これからコーチを目指す方に向けて、コーチングのスキルとはどのようなものなのか、を中心に書いていますが、この『コーチング思考』は、経営者のみなさんのマインドセットを意識して書いています。「廣器会」は、経営者の方々がメンバーですから、本の感想を聴かせていただいて、いろいろご批判をいただきながら、ディスカッションできればいいな…と思っています。
私は、「幸せ創造企業」には、コーチングが求められていると考えています。この本は、これまであまり触れられていなかった「コーチャブル」に注目してみました。そのあたりについては、第3章「社長が変われば会社が変わる」に書いています。
「コーチングを効果的に活用できる人は、他者の視点や今の自分にない新しい視点を探求しようとするコーチャブルな人である」という視点です。
コーチャブルとは、Coach(コーチ)とAble(可能性)を合わせた言葉です。コーチングを受けられる状態にある人のことを言います。
79ページを開いていただけますか? 見出しは、「コーチャビリティを伸ばす『SPACE』」としました。コーチャブルな人には、5つの特徴が見出せます。英語表現の5つのキーワードの頭文字をとって、SPACEとしています。
- Self-Awareness…自分を知っている
自分の感情の状態に気づいていて、同時にそれが他者にどのような影響を与えているかも、認識できていることです。
事実として起きたことと自分の解釈を切り分けて観察し、まるで第三者を見るかのように自分自身を俯瞰することで、自分にとってよりよい選択をしていくことが可能になります。
例えば、ある社員とうまくコミュニケーションできない、と感じた時、その社員がどうなのか、ということではなく「自分自身の感情や気持ちはどういう状態になっているのか」、に気づくということです。この Self-Awarenessはとても大切なので、最初に挙げています。 - Passion…情熱がある
この「情熱」は、経営者のみなさんはお持ちの方ばかりだと思います。
人生で達成したい夢や目標があり、成長にとても意欲的で、新しいチャレンジを学びの好機として捉えることができます。「絶対に実現してみせる」「やり遂げてみせる」という熱い情熱です。 - Accountability…当事者意識がある
すべてのことは自分の選択や行動の結果であることを理解していることです。「〇〇してくれない」と他者を責める代わりに、目指すゴールに向かって「では自分には何ができるか? 自分は何を変えられるか?」を問い続け、主体的に行動を起こすことです。 - Curiosity…好奇心旺盛である
新しいことに興味・関心を持ち、「まずはやってみる」という行動のスタンスを持っていることです。変化を恐れず、失敗さえも学びにしていくことができます。 - Execution ability…実行力がある
段取りを決めて物事を遂行する力です。高い目的意識をもって、一度始めたからには確実に最後までやり遂げることができます。
この5つが「SPACE」です。加えて、他者の視点や、今の自分にはない新しい視点を探求することに対してオープンである心の広さやゆとりがあるといった意味も含んでいます。
五十嵐さんのこの言葉に触れた際、まさに「廣器会」と名付けられた私たち経営者グループにとって、目指したい「器」であると感じています。
そして、この5つが自分自身に備わっているのか、診断するためのシートを83ページに掲載しています。ぜひ、みなさんも、じっくりとやってみてください。
続いて84ページの「フィードバック受容力」が、経営者にとって、とても大事だと思うんですね。前段でも書いたのですが、「裸の王様になっていないか」、そうならないためには、率直なフィードバックを受容することができる「力」が求められます。
コーチングのフィードバックは、相手の鏡のような存在になって「聞こえたこと」「見えたこと」「感じたこと」を伝えることです。プラスのフィードバックは受け入れることができても、果たしてマイナスのフィードバックはどうでしょうか?
マイナスのフィードバックこそ受容できる、ということが求められるので、書かせていただいています。
それから、フィードバックは、相手の成長を願うという視点が大切です。その気持ちがあって伝えるから、相手に響くわけです。
あと、私がいつも大事にしているのが「調和」です。講座の中でも、繰り返しお話ししています。世の中は、二項対立として語られることが多いですが、そういうことがまかり通っているから、世界は一つになれない、ということです。ですから、この「調和」を大切にし、広めていきたいと考えています。
「調和」は、妥協や強制とは異なり、違う人の価値観というものを、否定しないで、きちんと受けとめて、そして「どうしてその人はそう考えるのか?」と、奥にあるものを探っていくことだと思います。他者は違っている、という前提の中で、それを調和させて「第三の価値」を見出していく、このことがこれからの企業経営にとって、とても大事になっていくと考えています。
「異質の調和」をちゃんと受けとめて、そして「全体として一つにしていく」というのが、企業のパーパスとなるわけです。会社の価値観と、社員一人ひとりの異なる価値観に「調和」が生まれれば、その企業も社員も成長がしっかり見えてきますよね。
一人ひとり異なる価値観の社員をどう生かしていくか…大きなテーマとなっていますが、社員一人ひとりの目指すところ、ありたい姿はどこにあるのか、ということを、一人ひとりと向き合って、探っていく。それと、会社が目指す内容が一致するとろころを探し出していく。とても大変な作業ですが、欠かせないことだと思います。
社員一人ひとりの「幸せの価値観」を見つけていく…このことが強く求められています。
そこで、お尋ねしますが、みなさんは、「社員の幸せの価値観」をどのようにして見つけていますか?
朝会の際、週末何をしたかを訊く…。週末はプライベートですから、どんなことに価値をもっているのかな?…と推察できるための機会を増やそうと思っています。そういう行動をとっています。
(皆が拍手)
私が社員と話していて気にすることは「楽しいか、楽しくないか…」ということです。ここを第一としています。「仕事はどうよ?」と訊いて、「楽しい」と答えればOK。「楽しくない」という言葉が返ってきたら、「じゃあ考えよう…」という流れです。
(皆が拍手)
大切なことは、社員の「行動」をしっかり見ていくこと。その「行動」の背景には何があったのか? どのような経験に基づいて、そういう「行動」をとっているのかを考える、ということだと思うんですね。
何を大事にしているのかを、「行動」を観察することで見つける。その社員が時間をかけて取り組んできたことなどを聴いて、そうやって把握しながら、「社員一人ひとりのありたい姿」を見つけていく。それがとても大切かなあ、と感じています。
そして、その社員が大事にしている価値観を知ることによって、それを会社の中で、どのようにして「社員を生かす場をつくっていくか」、を一緒に考えていく。このことがとても大切だと思います。
【講演を受けてのグループディスカッション】
各章の終わりに「質問」を設けています。これについて、みなさんに訊いてみようと思います。まずはお一人おひとりで考えていただき、その後、各グループ内で、ディスカッションしていただこうと思います。
会場は3つのグループ、オンラインは3人なので1チームに分かれていだきましょうか?
<108ページにある3つの質問>
- あなたの行動の足枷になっているものがあるとすると、それは何ですか?
- あなたは周囲の人からマイナスのフィードバックをもらったとき、どんな気持ちになりますか?
- どんな問いを持つことがあなたの成長につながると思いますか?
各チームの発表は以下の通りです。
(オンラインチーム)
この3つの質問には、その関係性において「表と裏」といった答えが出るね、と気づきました。「足枷」になっているのは「固定観念」であり、「固定観念」を脱却することが出来れば、次につながるんじゃないか、という意見が出ています。
1番と3番が「表と裏」のようになっていて、この関係が分かると、次につながっていけるね、ということが共有されました。
(皆が拍手)
(飯田橋セミナールーム①チーム)
客観的に捉えてみると、対照的な答えが出て来ました。
Aさんは、1について「お金」と言ったんですね(皆が笑)。「じゃあ、お金があれば何でも出来るんですか?」と訊くと、「あとは時間」とおっしゃったんです。バリバリのビジネスマンみたいです(笑)。
あと2について、「ムカつくけど、一応消化できるようになってきた」と言われるので、これは「まあそうだよね…」と、思ったりして…
3つ目は、「あんまり考えたことない… それが何なのか、問い詰めることかなあ…」と答えられたので、仕事にどっぷりつかっておられて、走りまくっているのがAさんなんだなあ、と感じています。
逆にEさんと僕は、結構同じような感じで、共通点、共感ばっかりで、1の「行動の足枷」については、僕は「自分自身」って言ったんです。E さんも同じようなことをおっしゃったし、2の「マイナスのフィードバック」は、「ムラはあるんだけど、“ありがとう”と応える」って、Eさんは、おっしゃったので「スゴイなあ!」と…(皆が大笑い)
ここは、どっちかって言うと、Aさんの「ムカつく」に僕は近いんだけど、CBLで「ちゃんと受容しなければならい」と、習ったので「受容」しようとするんだけど…(笑)。Eさんの「ありがとう」は、スゴイよね~
3つ目の「成長」については、僕もEさんも第4コーナーですから、「セカンドライフ」とか「この先どうするか」が気になるよね…と。僕の場合は、今やっていることが「ためになるのかな?」という基準で見ています。二人で共通したのは、「セカンドライフ」って、80~90まで働くから、「これがあるよな!」って、改めて今、自分たちは思っているよな…ということで盛り上がりました。
(皆が拍手!)
そして、Eさんが「ありがとう」と言葉にした「わけ」を語ってくれました。
昔のことです。上司から仕事の時、よく厳しく言われたりするんですが、そういう時に限って、その上司は夜飲むと、「ありがとう」と言って私を抱きしめるんです。はじめてのときは、恐ろしかったんですが(皆が大笑い)、だけど、それをいろんな人にやっているんですね。それで「そうか…」と思って。
それって、半分はパフォーマンスでやっていると思うんですけど、この経験から、どんなに会議でゴチャゴチャしてても、お互い「ありがとう」って言葉にすると、「ホントに、これが大事なんだなあ…」という経験があって、でも…それって言えない時がありますよね。疲れてたり、イラついていたりしたときは、そういう感情をなくしていくことが、その上司の態度を見て、心がけるようになって、それが私の原点になっているなあ、とマジに思っています。
(皆が拍手!)
ありがとうございます。組織の中で「ありがとう」という言葉が広がっていくと、多分「フィードバック」し合う環境ができていく、つくられていく、ということだと思います。
(飯田橋セミナールーム②チーム)
1つ目の「足枷」は、だいたい、①チームと似たような感じになりますけど、周りの目とか、常識とかが「足枷」になっているんじゃないか、ということですね。「失敗するリスク」、それが不安になって、「足枷」になってしまうということもあると思います。
やりたいことがいろいろあって、かえって集中できなくなる、というのも「足枷」かなぁ、と。そういう意見がありました。
2つ目の「マイナスのフィードバック」については、これは3人一致して「ムッとしてしまう」と。その時の自分自身のコンディションとか、相手の言い方、相手がどのような立場の人なのか、それによってもちょっと変わってくるね、と。
あとは、「へこむ、落ち込む」という感情になってしまう。それから、「否定」に入ってしまう、自分を「防衛してしまう」、そのような意見が出ました。
最後の3つ目は、一番時間を割いた質問でした。目の前の自分に降りかかった出来事…ポジティブ、ネガティブに限らず…が、自分に何をもたらそうとしているのか? そういったことを考えるようにしている、という意見が出ています。
次に… 社員一人ひとりの幸せを探っていこうとすれば、成長につながっていくのではないか、という捉え方です。それから、 自分が認められなくても、周りの人のいいところはどこなのか? これも探っていくことが出来れば、成長につながる、という考えです。
「自分は世界のすべてを知っているわけではないんだよ」というのを、常に自分に問いかけている、ということですね。
最後に、自分の行動は「公明正大」なのか、常に問いかける、という発言が出ています。
(皆が拍手!)
「足枷」が生じた時、皆さんは、どうやって乗り越えていかれるんでしょうね?
今3人で話した時間が、メッチャクチャ良くってですね。3人それぞれが、すっごい内省したんです。できたんです、話しながら。だから、そう… こうやって内省できるんだ、と気づけたことが、今大きかったなあ、と思っています。
それで、「意識したい」ということを、Gさんは「経営理念」のなかに反映されていて、毎朝の習慣にされているんですね。たとえば「経営理念」というと、「公明正大であるか」という、非常にシンプルな一文を入れることによって、日々の行動が、ちゃんと自分自身の価値観と合った行動や判断につながっているか、ということを担保するようなしくみを作ってらっしゃるんですね。
それから、毎朝「論語抄」を読んで、そのことが…できていないことが多い(笑)…と言われつつも、そういうルーチンを作っていることが、「足枷」なるようなことがあったとしても、そういう「しくみ」「しかけ」を作ることで、回避していくとか、乗り越えていくことができるんだなあ、と今日の話で共有できました。
(素晴らしい!と、皆が拍手!)
(飯田橋セミナールーム③チーム)
3つの質問のうち、2の「マイナスのフィードバック」をメインで話をしておりました。
そもそも、なぜフィードバックをマイナスに感じちゃうのかね…? というところの話がありまして、うまくできていないところ、自分でもわかっているのに…というところを、突っ込まれたりしたとき、感じてしまう、という意見が出ています。
いいこと言われたりしたときも、自分がいい感情ではないときに言われると、「マイナスに感じちゃうよね」、という話が出てきていました。
「どう受け取ってしまうか」ということと、「マイナスのフィードバック」は、傾向的にどんなものがあるか、セミナーなどで大人数からアンケートを受け取った場合に、社会経験が少ないのにもかかわらず、偉そうなことが書かれていたりすると、感じたりするらしいんですけど、総数からすれば、ほんの数パーセントだったりするので…。ただ、その数パーセントの中にも、役に立つ意見もある、ということです。受け取った時は、いい気持にはなれなかったけど、肚落ちすれば、役に立てるようなことがある、ということです。
それで、マイナスに関わらず、ということなんですが、行動は、相手に言われて変わるわけではなく、自分で変えていくものなので、そこをマイナスに感じても、自分が受け入れることが出来れば、自分が変わることができるチャンスになるんだな、という話になりました。
(皆が拍手!)
ありがとうございました。
フィードバックの仕方ですが、コーチングでは「私はこう感じる…」という「Iメッセージ」を使います。「お前は…」という「You」ではない、「Iメッセージ」です。
「私はこう感じるんだけど…どうかな?」と、問いかけてみる、というのもあります。
それから、「ちょっと、厳しいと感じるかもしれないけれど…」と、事前に断りを入れる、ということです。了解を取ってから言った方が、伝わりやすいですね。
そういった、フィードバックの伝え方もあるのかな、と思いましたね。
おおいに盛り上がりましたが、そろそろ時間ということで、
五十嵐さんから、
『コーチング思考』は、セルフコーチングとしても読むことが出来ますので、まだ読んでいらっしゃらない方は、ぜひとも目を通してみてください。ありがとうございました。
と、お礼とともにこのあたりでお開きとなりました。
なお、カエルンさんが、ビジュアルにして内容をまとめてくれています。
(そのビジュアルを見て、皆より「スゴ~イ!」という声が上がりました)
【終了後に懇親会開催】
この後、評判の中華料理店にて、「懇親会」が実施されました(20時~)。ほぼ全員参加で、大いに盛り上がりました。
とても充実した「第2回廣器会」であったなぁ、と、リポーターとして振り返っています。
大いなる刺激をいただき、感謝申し上げます。
皆さまお疲れ様でした!
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講師紹介
五十嵐 久
株式会社コーチビジネス研究所 代表取締役
公的な中小企業支援機関を経て、2014年(株)コーチビジネス研究所設立し代表に就任。
永年にわたり中小企業診断士として経営のご相談、資金調達支援、起業支援、再生支援等に従事、2005年に認定コーチとなり、以後エグゼクティブコーチとして活動。
2019年一般社団法人日本エグゼクティブコーチ協会 会長就任。
支援企業は3,000社、コーチング実績は、5,000時間を超える。
経済産業省、内閣府、東京都中小企業振興公社、東京商工会議所、中小企業診断協会、淑徳大学、航空大学校、中学校その他団体・企業にて研修・講演実績多数。
資格
・国際コーチ連盟 認定プロフェッショナルコーチ(PCC)
・中小企業診断士
・国家資格キャリアコンサルタント
・産業カウンセラー
レポーター紹介
坂本 樹志
株式会社コーチビジネス研究所 取締役 CBL認定コーチ 中小企業診断士
広島県出身。大学卒業後、大手化粧品会社に入社。財務、商品企画開発、販売会社代表取締役、新規事業開発、中国上海・北京駐在、独資2社設立し総経理等を歴任。その後CBL認定コーチとなり、エグゼクティブコーチとして活動開始。『カウンセリング&コーチング クイックマスター(同友館)』『格闘するコーチング(かんき出版)』など著書・執筆多数