「AI時代の静かなるリーダーシップ」-AI時代のリーダシップとイノベーションの可能性を探る-

<第16回「廣器会」講演会レポート>

開催日時 2025年7月10日(木)18:30~20:00(懇親会 20:00~22:00)

開催場所 (株)コーチビジネス研究所 飯田橋セミナールーム + オンライン

第16回目を迎える「廣器会」は、三木康司さんをお招きしての講演です。これまでの講演と同じく、今回もパワーポイントのスライド資料をご厚意でお預かりしています。要所で紹介させていただき、臨場感あふれる実況中継風にレポートさせていただきます。

さて、この冒頭コメントは、第〇回、および講演タイトルと講演いただく方のお名前を変えるのみで、毎回同じ導入なのですが、今回は「スライド資料」だけでなく、素晴らしいプレゼントも頂戴しています。
それは三木さんご自身が、100%そのままの「講演録」を作成され、「note」で公開されているのです。事前に連絡いただいていますから、しっかり読み込んでみました。

100%というのは、文字通りです(数字通り、と言った方がよいですね)。私は、三木さんより了解をいただき1時間半の講演を録音しています。それと照らし合わせたところ、講演でお話しされていない内容が加味されることも、クローズドな講演にありがちの「これはオフレコですが…(政治家の講演で十中八九あるようです…笑)」的な、後でカットされた箇所も存在しません。1時間半の講演すべてがそのまま再現されたブログとしてアップされています。

<ブログのURL>

https://note.com/zenschool/n/n7585ea6023f2?sub_rt=share_pw

したがって、「実況中継風」と方針を定めて公開し続けてきた「廣器会レポート」について、毎回の「書き始め」で“強く”感じてしまうプレッシャーから今回は解放されています。ですが… 異なるプレッシャーが迫ってきます。つまり「何をレポートすればよいのか…」という根源的な(大げさですね…)悩みです(汗)。
それもあって、「廣器会レポート、悩んでおります…」と、三木さんにチラリ相談したところ、早朝にもかかわらず3分後に、返信をいただきました。

ホッとしました(笑)。
「講演録」は既にいただいておりますので、今回は趣を変えて、三木さんを「五感」で感じていただけるよう、紹介させていただきます。
というのも、フォトグラファーのJINさんが送ってくれた写真の枚数が、これまでと比較にならないほど多かったのです。その理由はJINさんに訊いていませんが、三木さんから伝わってくるお人柄に啓発されたことで、カメラマン魂に火が付いた…のだと想像しています。熱い!

いつもにも増して「前置き」が長くなりました(苦笑)。
「廣器会」の主宰者である(株)コーチビジネス研究所中村取締役の「ご挨拶」から、レポートをスタートしようと思います。

中村主宰

第16回の廣器会は、「AI時代の静かなるリーダーシップ~AI時代のリーダーシップとイノベーションの可能性を探る」というテーマです。私は三木さんの書かれた『トゥルー・イノベーション』を買って読みました。素晴らしい本ですね!」

大きな拍手が起こります。

三木さん

ありがとうございます。

本日は、「株式会社enmono」の代表取締役の三木康司さんと、技術担当取締役の宇都宮茂さんにお越しいただいています。三木さんは、「一般社団法人Zen2.0」の共同代表もされています。今回の講演は、三木さんにお願いしました。創業15年ということで、たくさんの会社のイノベーションを支援されています。
ところでみなさん(廣器会メンバーに)、自社のイノベーションに関して、困っているということはありませんか? そんな話もあるんじゃないかと思います。

それでは三木さん、よろしくお願いします!

大きな拍手が起こります。
講演内容は「アジェンダ」といった今風の表現ではなく「本日の旅路」と題されていました。

【本日の旅路】

「探求」「対話」「実践」の3つのキーワード

  1. AIトレンドと世界経済への影響
  2. 静かなリーダーシップとマインドフルネス
  3. AI時代の必要事項…AI時代のAuthentic Insightの重要性について認識する
  4. 対話…参加者と対話し、視野を拡張

三木さんのプロフィールを紹介します。

講演のスタートは、「AIが世界経済に与える衝撃的なインパクト」です。ここについては、「noteのブログ」の中から、紹介させていただきます。

三木さん

このレポートによれば、計算資源は10の16乗から26乗まで、文字通り指数関数的に増大しています。つまり、横軸を直線的に見ると緩やかな増加に見えますが、実際には爆発的な成長を遂げているのです。さらに驚くべきことに、モデルの効率は8ヶ月ごとに倍になっているといいます。2025年夏にリリースが予定されているGPT-5は、この傾向が続けば、現在のGPT-4とは比較にならないほどの能力を持つことになるでしょう。

三木さん

特に注目すべきは、AGIが完成し、自己改善ループに入った後の影響です。レポートでは、まず一般的な肉体労働への影響から始まり、次にサイエンスとテクノロジー、そしてロボティクスへと波及し、最終的には軍事分野を経て世界経済全体に甚大なインパクトを与えると予測されています。
マッキンゼーのレポートによれば、生成AIが世界経済に与えるインパクトは1,185兆円に達すると予測されています。しかし、この数字だけでは実感が湧きにくいかもしれません。具体的に見ていくと、特に影響が大きいのは以下の分野です。

一部を紹介していますので、前後の流れは、「note」で公開されているブログをご覧ください。
さて、三木さんの講演をライブで参加して、強く啓発されたコトがあります。
冒頭の前置きで……「講演録」は既にいただいておりますので、今回は趣を変えて、三木さんを「五感」で感じていただけるよう、紹介させていただきます。……とコメントしました。

私はサラリーマン時代の40年を含めて、膨大な数の「講演」を参加者として体験・体感しています。いずれも素晴らしい「講演者」でしたが、「その人たちと三木さんは何かが違うなあ~」との感覚(私の五感です)がきざし、「それは何だろう…」と自問自答しながら聴き入っていたのですね。そして像が結ばれました。

「三木さんは正真正銘の自然体だ…」と。

言葉巧みに聴衆を沸かせ、要所で「笑い」をとっていく「プロの講演者」は、あまた存在します。そのような「講演者」と、三木さんは一線を画している。
同じ空間と時間を共有した「廣器会メンバー」は、この私の想いを共有していたと確信します。このレポートだけで、その想い(五感)がどこまで伝わるかは「?」ですが、ここで、まずJINさん撮影の写真を5枚ほど、紹介させていただきます。

写真は「真を写す」。三木さんの語り口は、とても穏やかで静か。優しさフルネスの挙措と相まって、弊社セミナールームは癒しの空間に遷移しました。
さて、前回まで長~く綴ってきた「実況中継風レポート」なのですが、「100%の講演録」がありますので、皆さんに「どうしてもお伝えしたい」という内容(私の想いです)に絞って、簡潔にレポートさせていただきます。

三木さんは「2. 静かなリーダーシップとマインドフルネス」の中で、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏について、語りを進めます。

私は、サティア・ナデラ氏の「自伝」である『Hit Refresh』を読み込んだことで、去年の4月~6月に、10回ほどサティア・ナデラCEOに関するシリーズ・コラム書いています。ナデラ氏とは一言でいうと「共感の人」です。三木さんは、障害をもって生まれた長男ザイン氏について、静かに語ってくれました。
ナデラ氏が早すぎる自伝を書いたのは、ザイン氏が存命のうちに書き残しておきたい、という強い動機があったからなのでは…と感じています。そのことを綴ったコラム<マイクロソフトCEOサティア・ナデラ氏の『Hit Refresh』は、インドのハイデラバードから幕が上がります>に、リンクを張らせていただきます。

それからもう一つ。今年の3月末~4月初に、日経新聞はマイクロソフトについて、気合を漲らせた特集記事を組んでいます。ナデラ氏の大ファンである私は、<「コーチング×サティア・ナデラCEO」…マイクロソフトの大復活は、ナデラ氏の「人格・哲学・器」によって成し遂げられた!>のタイトルでコラムにしていますので、こちらについても紹介させていただきます。

三木さんの講演は、ここからマインドフルネスにつながります。「静かなるリーダーシップ」は、三木さんその人が体現しているリーダーシップであることが伝わってきます。
三木さんのブログを引用させていただきます。

マインドフルネス ― 静かなるリーダーシップの基盤

マインドフルネスとは何か
静かなるリーダーシップを支える重要な要素として、マインドフルネスがあります。マインドフルネスとは、過去への後悔や未来への不安にとらわれず、評価・判断をせずに、今この瞬間に意識を向け、気づきに満ちている状態のことです。
わかりやすく言えば、人間が税金の心配や晩ご飯の献立を考えながら散歩しているのに対し、犬は目の前の木の匂いに100%集中している――犬の状態がマインドフルネスです。理想的には、今目の前のことに100%集中し、過去の後悔や未来の不安ではなく、今ここに集中することです。

講演では、ここでとても面白い絵図が登場します。「納得至極」でした(笑)。

続いて、「Zen2.0」の紹介です。ブログを引用させていただきます。

Zen2.0での実践例

三木さん

私たちが主催する「Zen2.0」は、9年間で世界最大規模の禅とマインドフルネスの国際カンファレンスに成長しました。鎌倉の建長寺をお借りして、毎年開催しています。

鎌倉の禅文化から生まれたZen2.0
これまでのZen2.0の実績

100名を超えるボランティアメンバーと共に運営していますが、全員が異なる仕事を持ち、東京や鎌倉など住む場所もバラバラです。金銭的なインセンティブで動いているわけではないこのチームをまとめるのは、決して簡単なことではありませんでした。
そこで重要だったのが、共にマインドフルネスを実践し、同じ「あり方」を共有することでした。会議の前には必ず3分間の瞑想を行います。オンラインでも同様です。これにより集中力が高まり、会議の質が向上します。
相手の言葉にリアクティブに反応するのではなく、一呼吸置いて内省することで、「自分の中に怒りを感じている」ということを認識しながら、それをどう相手に伝えるかを考える――このような思考の「間」ができることで、チームの関係性が深まっていきます。

講演の後半からは「IKIGAI」がテーマとなります。三木さんは静かに、でも力のこもった言葉で、私たちに「IKIGAI」を語ってくれました。ブログの「見出し」を紹介します。

AI時代に求められる「生きがい」の重要性

世界が注目する日本の「IKIGAI」
生きがいの本質と語源
世界に広まった「生きがい」概念と日本的理解の違い
100歳の清掃員に見る生きがいの本質
AI時代における生きがいの決定的重要性

講演は最後の山場を迎えます。三木さんが提唱している「トゥルー・イノベーション(True Innovation)」です。「廣器会」主宰者の中村取締役が、冒頭のご挨拶で「私は三木さんの書かれた『トゥルー・イノベーション』を買って読みました。素晴らしい本ですね!」と、紹介した「True Innovation」の紐解きです。
まさに「素晴らしい」内容が語られます。ぜひともブログを読み込んでいただければ、と思います(併せて本も購入を!)。「見出し」最後の内容を引用します。

True Innovation 内なる情熱から生まれる飛躍的イノベーション

内なる情熱の持続力
Me-too InnovationとTrue Innovationの最大の違いは、外的な批判への耐性です。Me-too Innovationは外側の刺激から始まるため、批判に弱く、困難に直面すると諦めやすい傾向があります。
一方、True Innovationは自分の内側から湧き上がる本当にやりたいことなので、どんなに批判されても、どんなに困難があっても諦めません。それは単なる思いつきではなく、その人の存在の根源につながる欲求だからです。

私たちのzenschoolでは、瞑想を使って10歳の頃の夏休みに戻り、その時の記憶や感情を呼び起こします。面白いことに、5カ国の参加者(アラブ首長国連邦、イギリス、ウクライナなど)が10歳の頃に戻ると、みんな子供のような状態になって仲良くなります。
例えば、ウクライナの方が「夏休みに空き缶を集めて、自転車でお店に持っていってお金に換えてもらった」という話をすると、他の国の人も似たような原体験を持っていることがわかり、そこから深い共感が生まれます。そして、その原体験が意外にも現在の仕事につながっているのです。

今回のレポートの最後に、ブログの「おわりに ― 内なる静けさから生まれる真の革新」を引用させていただきます。「三木さんの渾身のメッセージ」であると、受けとめました。

おわりに ― 内なる静けさから生まれる真の革新

16年前、リストラされて深い絶望の中にいた私を救ったのは、禅との出会いでした。そして今、AIという新たな波が押し寄せる中で、改めて禅の教えの重要性を実感しています。
激動の時代だからこそ、外側の変化に振り回されることなく、内なる静けさを保つことが大切です。そして、その静けさの中から、本当の自分の声を聞き、真のイノベーションを生み出していく。
静かなるリーダーシップとは、決して消極的なものではありません。むしろ、深い洞察と揺るぎない信念に基づいた、最も力強いリーダーシップの形です。それは、サティア・ナデラ氏が示したように、静かでありながら大胆に、謙虚でありながら革新的に、組織と世界を変えていく力を持っています。
私たちに与えられた使命は、AIと共に進化しながら、より人間らしい社会を創造していくことです。そのためには、まず自分自身の内側を見つめ、「生きがい」を見出し、それを基盤として新しい価値を生み出していく必要があります。
今この瞬間に意識を向け、自分の生きがいとつながり、周囲と共創しながら、新しい時代を切り拓いていく――それが、AI時代における私たちの生き方なのではないでしょうか。
禅の教えは、「答えは常に自分の内側にある」と説きます。外の世界がどれだけ変化しても、内なる本質は変わりません。その本質につながることで、私たちは真の意味で自由になり、創造的になれるのです。
Zen2.0のボランティアメンバーの一人が言いました。『Zen2.0へ参加したお客様から、以下の言葉をいただきました。「サポーターの方々がとても親切に対応してくださいました。チケットの価格は、とても安いと思います。」』
「でも、値段は上げてほしくはないです」。
この言葉に、私たちが創りたい世界の本質が表れています。経済的な価値だけでなく、人と人とのつながり、共感、そして共に創る喜び――これらこそが、AI時代においても変わらない、人間の本質的な価値なのです。

最後に、「マインドフルネス」という言葉を世界へひろめられたティク・ナット・ハン老師の作られたお寺のあるお坊さんから頂いた「Authentic Insight」という書の話をさせてください。私があまりにもAI、AIと言っているので、「本質的な内側に意味があるんですよ。外側の人工知能じゃなくて、本来のAI時代の本当の意味は、この本質的な自分の内側にあるよ」ということを教えていただきました。賞には「Less Smart, More Heart」と書かれていました。考えを小さくしていくと、愛が生まれる――これが、AI時代を生きる私たちへの最も重要なメッセージかもしれません。

AI時代に本当に必要となるもうひとつのA.I.(Authentic Insight)

共に、内なる静けさから生まれる真の革新への道を歩んでいきましょう!

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次回廣器会は・・・

「一貫性」
-一貫性を重視した歩み方が呼んでくれた数々の奇跡について-

-廣器会#17

小川優子氏 プロフィール

株式会社『和芸韻(アゲイン)』代表取締役社長
文学修士
『短歌21世紀』選者、副編集長
現代歌人協会会員、中日文化センター講師。NPO日本学校教育演劇会理事


1964年福島県生まれ。1992年より『アララギ』入会 清水房雄に師事、2001年第一歌集『路上の果実』上梓、2008年よりアララギ後継誌『短歌21世紀』選者、2020年『流浪の果実』上梓。 2024年都立高校教員を退職し、文芸サロン『銀狐』をオープン。
現在、株式会社『和芸韻(アゲイン)』代表取締役社長。文学修士。『短歌21世紀』選者、副編集長。現代歌人協会会員、中日文化センター講師。NPO日本学校教育演劇会理事。

■内容
一貫性というテーマでお話しさせていただきたいと存じます。
誤りが明らかなこと以外は何も変えない疑わない。そのことによってひとつらなりの道がどんどんひらけてくるのです。
その一貫性を重視した歩み方が呼んでくれた数々の奇跡について、私の生い立ちから現在に至るまでをお話しさせてください。

■こんな方におすすめ
迷いながらも、自分の信念を貫きたい人へ
“一貫した生き方”に、背中を押されたい人へ
人生の後半に、新しい挑戦を始めたい人へ

■開催日時
2025年8月21日(木)18:30-22:00

■開催方法
リアル会場開催のみ

■会場
短歌バー銀狐
東京都台東区下谷2-13-15
日比谷線入谷駅4番出口より徒歩2分
JR山手線鶯谷駅南口より徒歩5分
入谷駅から185m
銀狐HP
https://9ingitsune.studio.site/

■参加費 6,000円(懇親会費込み)

※ 開催日の前日までにキャンセル連絡ください。

※それ当日のキャンセルは、キャンセル料6000円をいただきます。

■お申込み
こちらのPeatixよりお願いします。

第17回学びの会合 (経営者のための廣器会)

https://peatix.com/event/4493962

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レポーター紹介

坂本 樹志

株式会社コーチビジネス研究所 顧問 CBL認定コーチ 中小企業診断士
広島県出身。大学卒業後、大手化粧品会社に入社。財務、商品企画開発、販売会社代表取締役、新規事業開発、中国上海・北京駐在、独資2社設立し総経理等を歴任。その後CBL認定コーチとなり、エグゼクティブコーチとして活動開始。『カウンセリング&コーチング クイックマスター(同友館)』『格闘するコーチング(かんき出版)』など著書・執筆多数

WEB構成

水野 昌彦

アイデアルブランズLLC 代表 ブランド・デザイナー 中小企業アドバイザー
美大卒業後プリンター・電子機器メーカー、独立デザイン事務所を経て自動車メーカーデザイン部でカーデザインに従事、エンブレムデザイン全般担当を契機としてブランディングに深く関与。ブランド体系構築をリーディング。2021年独立・法人化、代表に就任。「かんがえ方のデザイン」を提唱し中小企業のブランド・デザイン振興を支援している。

撮影

Jin-hitomi

インフラ系会社の購買部門で契約業務の他、経理・総務を歴任。日商簿記2級、ビジネス法務2級
パラレルキャリアで人物写真撮影(イベント、スナップ、スタジオ)、西洋占星術、ダンス(ヒップホップ、ロックダンス)など★魂の煌めきを照らす仕事★で元気とパワーを届けている。

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- 了 -
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