~田口光彦さんをお招きして~
<第21回「廣器会」講演会レポート>

開催日時 2025年12月11日(木)18:30~20:00(懇親会 20:00~22:00)
開催場所 (株)コーチビジネス研究所 飯田橋セミナールーム + オンライン
「廣器会」の第21回講演は、株式会社ジョイワークス 田口光彦代表取締役をお招きしての講演です。「人材開発&組織開発コンサルタント」として、数多くの企業を支援されています。過去の成功体験に囚われてなかなか変われない企業、あるいは過去の失敗がトラウマ化してしまい、変われるチャンスをみすみす見逃してしまう企業… 田口さんは、そのような企業に対して、真剣勝負で臨まれてきたことが、しかと伝わってきます。
言葉の一つひとつに「たましい」が宿っている。1時間半は、まさに「熱血講演」でした。
田口さんは、オリジナル資料によって企業環境・社会環境が大きく変化していることを、ファクトとして提示されています。世界の中の日本というマクロ環境のみでなく、具体的な企業事例も併せて紹介されていますから、とにかく「説得力」がある。田口さんご自身が、多くの企業の中に「入り込まれている」からこその「臨場感」が伝わってくるのです。
その講演資料も、ご厚意により提供いただいています。最初に田口さんのプロフィールを紹介させていただきます。


講演のテーマは、<今こそ、企業経営者が取り組むべき「人と組織」の要諦>です。全18ページの講演資料にリンクを張っています。ぜひともご覧いただき、「人と組織の要諦」を体感してみてください。
今回のレポートについては、その<要約>としてまとめさせていただきました。
資料と併せ、目を通していただくと幸甚です。
1. 企業経営の最重要課題としての「人と組織」
近年、日本企業が直面する最大の経営課題は「人材確保」です。2024年度中小企業白書では、直近の最重要課題として46.6%が「人材確保」を挙げています。次世代に向けた課題でも{「人材育成」と併せて、「人材確保」が上位であり、企業の競争力はもはや「人を採れるか」「人が辞めないか」によって決まる時代に入ったわけです。
業種別に見ると、建設業・運輸業・医療福祉・宿泊飲食などで中核人材・現場人材の不足が顕著です。70〜80%の企業が「不足している」と回答しています。さらに、採用力はすでに二極化しており、採用に困らない企業と、求人を出しても応募が来ない企業の差が急速に広がっているのですね。
この背景には、人口減少だけでなく、働き手の価値観の変化、キャリア観の多様化、企業への信頼低下など複合的な要因が絡み合っています。したがって、経営者は、「人材が集まらないのは時代のせい」と片付けるわけにはいきません。企業側の構造的課題として、真剣に向き合うことが求められるのです。

2. 人材育成の停滞と離職の本質的要因
人材育成に関する課題として、企業は以下の問題を抱えています。
- 指導する人材が不足している(53.3%)
- 育成にかける時間がない(39.5%)
- 育成しても辞めてしまう(25.6%)
- 育成ノウハウがない(21.9%)
- 育てがいのある人材がいない(20.3%)
(レポーターの感想) 5.については、「そのような人材を採用できていない」、という背景を感じます。企業の器の小ささを経営者自ら告白してしまっている…… 「廣器会」という会の名称の「重み」を、改めて実感しています。
「育成しても辞める」という問題は深刻です。 1,000人以上の転職者の行動パターン分析によれば、退職の本質的理由は「キャリアや人生で求める進捗ができていない」ということです。
ネガティブな体験(仕事をしていて虚しさを感じる、同僚が好きでないなど)や個人的な状況の変化(引っ越しや子どもの誕生など)が退職を促す「プッシュ(押す力)」。
加えて、ポジティブな体験を得られる可能性が新たな仕事に向かう「プル(引く力)」、この2つの力が「転職の本質」であることに、経営者は気づかなければならない。
企業は、組織のニーズに沿った形で社員の進捗の探求をサポートすることによって、社員と企業の双方にとってメリットのある体験を提供することは可能です。そのためにも従業員体験をデザインする組織能力を獲得することが求められます。
(レポーターとして、特に感銘を受けた事例)
「野球好きのみを採用する会社」は、チームワーク向上と生産性向上を実現。
千葉県の会社は「サーフィン採用」と称して全国から優秀な人材を獲得している。「筋肉採用」(…この言葉だけでは、よくわからなかったのですが)は「病院が特定の興味(筋トレ)を持つ医師を効率的に採用している」という含意のようです(笑)。
● プッシュ要因(辞めたくなる力)
- 尊敬・信頼できる人がいない
- 仕事に意味を感じない
- 自分の貢献が認められない
- 孤独感、無力感
- キャリアの次のステップが見えない
● プル要因(新しい環境に惹かれる力)
- 価値観の一致
- 成長機会の存在
- 仕事への誇りや意義
- コミュニティの一体感
- 自分の能力を発揮できる環境
企業はこの両面を理解し、従業員体験(Employee Experience)をデザインする必要があります。 「辞めないように管理する」のではなく、「ここで働き続けたいと思える経験」を提供することが重要、ということです。

3. (株)ジョイワークスが提供する3つのアプローチ
株式会社ジョイワークスは、企業の「人と組織」の課題に対して、以下の3領域で支援を行っています。
① 戦略人事
ワークショップを通じて人事とともに人事企画を行い、戦略人事へと転換する。そのプロセスと通じて人事スタッフのプロフェッショナル化を実現する。
② 人材開発
企業戦略やビジョン達成をするのも全ては人である。社員の高いパフォーマンスを実現するために必要なのが人材開発である。アクションラーニングを通じて、組織の課題解決と人材開発を同時達成する。
③ 組織開発
従業員満足・モチベーションからエンゲージメントの時代に変わっている。組織開発の目的は、組織の健全性と効果性を高めることであり、組織の自己革新力を醸成すること。組織開発の究極の目的は「最高の職場」づくりである。
4. 組織変革の実践:チェンジミーティング
チェンジミーティングは、職場の最重要課題に対してメンバー全員の力を結集する組織開発手法です。
特徴は以下の3点。
- 貢献の自己決断…自ら達成すべき目標を自分で決める。
- チームとしての協働…仲間の存在を実感し、相互支援が生まれる。
- ナレッジマネジメント…プロセスを振り返り、学びを蓄積する。
この手法は、職場の関係性を強化し、困難な課題を突破する力を生み出します。
5. 「最高の職場」への移行プロセス
「最高の職場」づくりは、単なる福利厚生の充実ではなく、経営者の覚悟と組織的な取り組みが必要ということです。半年ごとのサイクルで進捗を確認し、以下のステップで進めます。
- 経営幹部による研究会の開催…先行企業から学び、考え方を共有する。
- 経営トップの移行宣言… 全社に向けてビジョンと本気度を示す。
- 管理職層によるプロセス検討… マネジメントのあり方を議論し、行動に落とし込む。
- 職場単位での組織開発活動…リーダーシップ開発、チームビルディング、トレーニングを実施。
- 成果の確認とノウハウ共有…成果を全社で共有し、次の半年の目標を設定する。
6. GPTWモデルが示す「働きがい」の構造
「Great Place to Work®モデル」では、働きがいは以下の3要素で構成されます。
- 信頼(経営者との関係)
- 誇り(仕事との関係)
- 連帯感(仲間との関係)
これらが高い企業は、
- 業績が伸びる
- 離職率が低い
- 応募者が増える という共通点を持つ。
働きがいは「甘やかし」ではなく「企業の競争力そのもの」、ということですね。
7. 日本企業が抱える構造的課題
国際比較では、日本企業は以下の点で低評価
- 生産性:G7最下位
- イノベーション:IMD競争力38位
- 働きがい:Gallup調査132位/139カ国中
これは単なる数字ではなく、 「人が能力を発揮できていない」 「組織が学習しない」 という構造的問題を示しています。
8. 成功企業の学び:トヨタと原田佐官工業所
● トヨタ
アメリカの研究者が分析したトヨタの強みは…
- 人間尊重
- 継続的改善
- 全社員のオーナーシップ にある。
個人主義のアメリカでも「トヨタウェイ」が成果を上げていることは、普遍性の高さを示しています。
● 原田佐官工業所
- 人材育成方法の公開
- 社員の作品集
- ノウハウの見える化
- 仕組みの公開
など、透明性と学習文化を徹底しており、中小企業でも「最高の職場」は実現できることを示す好例です。

9. 経営者への5つの問い
最後に、「皆さまと対話したいこと」を5つ挙げてみます。まずは、「自問自答」してみてください。「なぜ?」を突き詰めていくと、そこから未来が生まれますから。
- 皆さまが考える企業経営者が取り組むべき「人と組織」の要諦とは何か?
- 皆さまが考える「働きがいのある会社」とはどのような会社か?
- これから益々厳しくなる「人材争奪戦」で勝ち残るために企業経営者が取り組むべきことは何か?
- 「採用力」と「定着力」を高める重要成功要因は何か?
- 企業経営者として求められる態度変換や学習しなければならないことは何か?

講演の〆は「対話」です。ここで、弊社(株式会社コーチビジネス研究所)のPRをほんの少し……
私たちは日常、「対話」と「会話」の違いを、意識することなく(入り乱れつつ)使っています。実は、両者には「違い」が明確に存在するのですね。そのあたりについて、「コーチング視点」で、解き明かしています。
「コーチング大百科」に<プロコーチは、「会話」と異なる「対話の価値」を提供する「専門家」!>というタイトルを付し、公開しています。一読いただくと幸甚です。
田口光彦社長、ありがとうございました!

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レポーター紹介
坂本 樹志
株式会社コーチビジネス研究所 顧問 CBL認定コーチ 中小企業診断士
広島県出身。大学卒業後、大手化粧品会社に入社。財務、商品企画開発、販売会社代表取締役、新規事業開発、中国上海・北京駐在、独資2社設立し総経理等を歴任。その後CBL認定コーチとなり、エグゼクティブコーチとして活動開始。『カウンセリング&コーチング クイックマスター(同友館)』『格闘するコーチング(かんき出版)』など著書・執筆多数
WEB構成
水野 昌彦
アイデアルブランズLLC 代表 ブランド・デザイナー 中小企業アドバイザー
美大卒業後プリンター・電子機器メーカー、独立デザイン事務所を経て自動車メーカーデザイン部でカーデザインに従事、エンブレムデザイン全般担当を契機としてブランディングに深く関与。ブランド体系構築をリーディング。2021年独立・法人化、代表に就任。「かんがえ方のデザイン」を提唱し中小企業のブランド・デザイン振興を支援している。
撮影
Jin-hitomi
インフラ系会社の購買部門で契約業務の他、経理・総務を歴任。日商簿記2級、ビジネス法務2級
パラレルキャリアで人物写真撮影(イベント、スナップ、スタジオ)、西洋占星術、ダンス(ヒップホップ、ロックダンス)など★魂の煌めきを照らす仕事★で元気とパワーを届けている。












