<第10回「廣器会」講演会レポート>
開催日時 2025年1月9日(木)18:30~20:00(懇親会 20:00~22:00)
開催場所 (株)コーチビジネス研究所 飯田橋セミナールーム + オンライン
第10回の「廣器会」は、整理収納アドバイザー1級/国家資格キャリアコンサルタントの大村信夫さんにお越しいただいての講演です。テーマは「仕事の生産性向上に繋がる情報整理術」。プロフィールについては、「廣器会」の主催者である(株)コーチビジネス研究所 中村取締役の言葉(開会の挨拶)を紹介させていただきます。
今日は、大変お忙しく活動されている大村さんをお招きしています。大村さんは、スーパー講師でらっしゃって、あっちこっちで、年間100回くらい講演されているんですね。とても大人気で、でも副業でやられているんです。とにかくお忙しい方なんですが、本日廣器会のために来ていただきました。みなさん、盛大な拍手をお願いします。
みなさん、こんばんは~ 廣器会にお招きいただき、ありがとうございます。経営者でらっしゃる皆さまの前でお話するのは、本当にドキドキしてしまうんですけど、どうぞ皆さま、せっかくの出会いでございますので、お付き合いいただいて、その後! 美味しいお酒が用意されているとのことですので、ご一緒させていただければ、と思っています。
こうして、第10回廣器会がスタートしました。
今回の講演については、大村さんのご厚意で、講演資料(Zoom画面の録画)を提供いただいています。従いまして当レポートは、要所でスライド資料も紹介しつつ、報告させていただきます。大村さん、ありがとうございました。
中村さんの紹介にあるように、大村さんは家電メーカーの現役社員でもあるのですね(こちらが本業とのことですので、「でもあるのですね」という表現は違っているかも、ですが…笑)。まさにマルチタレントでらっしゃる。本もさまざま出版されています。
昔「クッキングパパ」という漫画・アニメが話題になりましたが、僕は「片付けを通して世の中に貢献したい」という想いで活動しています。商標もとっています。
おかげさまでこういう活動をしている男性は少ないみたいで、取材等、結構いただいています。
多い時は年間100回ぐらいお話させていただいています。つい最近の2024年11月15日に、『仕事の「整理ができる人」と「できない人」の習慣』を出版しました。ありがたいことに、まだそれほど経っていませんが、すでに2回増刷されています。手に取っていただくと大変嬉しいので、ぜひともよろしくお願いします。
Agendaの「1.冒頭/講師紹介」に続いて、本題の「2.情報整理の基本」のスタートです。
情報整理の基本
ここからは、皆さんとディスカッションしながらやっていきたいと思います。
最初は、「情報収集とは?」です。みなさんおっしゃるのは、まず情報収集して、それから整理して、ということになると思うんですが、実は情報整理は、ここまでではないんですよ。
このあとどういう要素があるか、皆さんよかったらお答えいただけますか?
廣器会メンバーから、さまざまの回答が返ってきました。
「情報を活用する」
「要らない情報を捨てる」
「情報を分ける」
スライドが変わります。
みなさん正解です。おっしゃったように、活用することです。その前に「分析」を入れています。収集するだけでは意味がありませんから、アウトプットですね。それが大切になってきます。
ただ、情報整理は目的ではなく、あくまでも手段ですよね。活用してこそ意味があるということです。
ここから、インターネットがはじまる以前の情報収集のあり方を大村さんは振り返ります。図書館に行ったり、会社の資料室で文献を調べていた頃の話…「若い方には想像できないと思いますけど…」と、笑いを誘います。
現在は、手軽に際限なく情報の収集が可能になりました。
「誰もが常時接続状態~情報に数秒、数十秒で辿りつける」
「際限なく情報を入手可能」
したがって、「玉石混交からどう探し出すかが重要」という新たなテーマが浮上します。
大村さんは質問します。「あなたが使う情報源は?」と。
ここでも、経営者の集まりである廣器会メンバーから多様な答えが飛び出します。大村さんは…「今回の内容は、東京理科大のオープンカレッジで3年間くらいやっているんですが、ここまでたくさんの情報源をお答えいただいたのは初めてです」と、少し驚いたように言葉にされました。さすがの「廣器会」メンバーです(笑)。
そしてスライドが変わります。
半世紀前にサイモンさんは、このような言葉を残しています。ここの「注意」は「アテンション・気づき」の意味ですね。
よく言われることですが、現代人が1日に得る情報というのは、平安時代の人の一生分であるとか、江戸時代の人の1年分ともいわれるくらい、我々は膨大な情報を浴びています。
インターネット、そして生成AIによって、情報量は指数関数的に増加しています。ただ私たちの脳の処理能力は、指数関数的に増えないので、やっぱり取捨選択は必要になるわけです。サイモンさんが言っているように、「目的(アウトプット)を意識した上で、注意・関心を持って収集する」、ということが必要になってくる、ということですよね。
大村さんの講演は、まさに時代を映します。とてもタイムリーなテーマだと感じられます。トランプ大統領のアメリカがいよいよスタートするわけですが、「メタ」がファクトチェックを止める、との報道も伝わってきています。情報に対するリテラシーを高めることが、まさに問われています。「情報の整理術」は、「一人ひとりの幸不幸に直結するテーマ」となってきた、ということですね。
大村さんは、3つの視点で情報収集のポイントを挙げています。重要な指標だと感じました。
ご自身の体験を通して大村さんは、「現場がとても重要である」「便利になった世の中だからこそ、現場を大切にしたい」、と言葉にされます。
情報収集について、とても便利な世の中になりました。反面、「知ることはできるようになった」とは思うんですが、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の肌で感じて、自分の頭で考える、ということを怠ってしまっているんじゃないかな、と私は感じるんですね。
続いて、講演は「情報整理・分析」に移ります。
情報整理・分析
「整理・分析をすることで、データや情報を『知識/知恵』に変えていく」
がテーマです。
大村さんは、私たちに「“データ”と“情報”の違いを説明してください」
と質問します。
廣器会メンバーの回答を紹介しましょう。
データの方は定量的、情報は定性的。
データは過去のもののような気がして、情報は未来の物をつかむ、という感じでしょうか。
データは事実といいますか、定量的ですけれども、情報は解釈も入っていたり…データの集め方で解釈も入っているかもしれませんが、情報の方が解釈のウエイトが高いように感じています。
大村さんはここで、「DIKWモデルというのがあるんです。読み上げさせていただきます」と、言葉にされます。ここからはスライドで紹介します。
そして、最後の「情報活用(アウトプット)」です。
情報活用(アウトプット)
「アクションプランまで立てて、施策実行までやる」。表層的な事象ではなく「マーケティング・インプリケーション(潜在的な意味)」を導き出す。ということが問われます。小説などの「行間を読む」、といった感じでしょうか。
このあと、ケースワークを経て、重要テーマの「ナレッジマネジメント」に移ります。今回の講演のフィナーレです。
個人や組織の生産性をあげる「ナレッジマネジメント」
大村さんは、ナレッジマネジメントを「知識管理」と訳すのではなく、「経営そのものであり」「知識経営」であると紹介します。
ここからは、日本ナレッジ・マネジメント学会の理事であり、公私ともに仲良くさせていただいている村上修司氏の資料も活用させていただきながら説明させていただきます。
その「知識」には「暗黙知」と「形式知」が存在する。
ナレッジマネジメントというのは、90%を占める暗黙知を組織の知識にし、付加価値を生み出すことなんですが、その代表的なフレームワークが「SECIモデル」なんです。
このモデルを提唱されたのは、一橋大学 野中郁次郎名誉教授なんですね。野中名誉教授はすごい方で、「ウォールストリートジャーナル」の「最も影響力のあるビジネス思想家トップ20」に、唯一日本人として入っている方なんです。
そこで書かれている内容は…
大村さんはこの表について、「難しいじゃないですか、難しい…」と言いながら、「難しいわけじゃないんですよ」ということで、平たく紐解いてくれました。
「重要なのは次のフェーズに回していく」ということなんですね、はい。
止めちゃあいけないんです。どんどん回していく、ということが重要なんです。そして、もっと簡単に説明すると…
これって、皆さん普通にやってらっしゃるんですよ。
野中先生は、業績が上がっている、良い組織やコミュニティーというのは、これを自然にやっていると言っています。野中先生の理論って、うまくやっているところの共通点は何があるか…ということを観察されたものなんですね。
大村さんは「何か補足とかありますでしょうか…」と、問いかけます。
ここで中村さんから、「伊藤さん、いかがですか?」と声がかかりました。伊藤さんは「一般社団法人 日本エグゼクティブコーチ協会(JEA)」の会長であり、廣器会第6回講演会で講演されています。もちろん廣器会メンバーです。
野中さんは「場が重要だよ」、とおっしゃっています。この「場」というのは世界共通語で、日本語が英語になっているんですね。「Ba」です。
私も野中先生の講演をよく聴くんですが、最近よく「日本をダメにした3つの過剰」ということを話されます。1つ目がオーバープランニング、2つ目がオーバーアナリシス、3つ目がオーバーコンプライアンス。この3つが日本をダメにした、ということです。
これは「両利きの経営」につながっていくんですけど、基本は先ほどおっしゃったように「現場」ですよね。「場」です。
ありがとうございます。「場をつくる」ということはとっても大切なことだと思います。皆さん、このような「廣器会」という素晴らしい「場」をつくってらっしゃる。本当に素晴らしいことだと感じています。
レポーターの私は、野中名誉教授の名前が登場したので感激しています。というのも、(株)コーチビジネス研究所のコラムで繰り返し、野中先生のことを取り上げているからです。「日本をダメにした3つの過剰」についても、コラムにしています。一読いただくと幸甚です。
そして最後の最後、今回の講演で私が最も感銘を受けたお話が、大村さんより披露されました。大村さんの言葉をほぼ逐語で紹介させていただきます。
私はナレッジマネジメント学会というところで学会員として勉強させていただいているんですが、「マインド・助け合いの気持ちが重要だ」といわれています。そして村上さんからも紹介いただいたのがこちらなんです。
それは「助け合いの気持ち」というタイトルの2枚の絵でした。
「天国の箸と地獄の箸」なんですけど、ルールがありまして、とっても長いお箸を使って食べる、ということなんです。じゃあそれぞれの食堂では、その箸をどう使っているのか? 地獄の食堂は、長い箸を各自が持って食べようとするんだけど、長くて料理を掴めないんですね。惨憺たる状況で、まさに奪い合いになっています。
一方で天国の食堂は、よく見ると自分ではなく向かいの人に向けてお箸を使っているんですね。お互いに食べ合っているんです。みんな与え合う世界です。
何を言わんとしているのかというと、どちらも環境は一緒ですよね。でも、幸福感は非常に大きく違っている。ナレッジマネジメントって、これで回るんですよ。
最後のまとめです。
こうして、和やかな雰囲気で終始した「第10回廣器会」の前半は恙なく終了しました。さあ、ここからが本番(?)です。第二部の「懇親会」が始まります……
大村さん、ありがとうございました!
坂本樹志
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大村さんは、(株)コーチビジネス研究所の中村取締役が主催する「上司道」の118回講演についてもPRされます(「廣器会」も中村さんが主催者です)。
第118回上司道
あなたから始める“組織的”知識創造&ワークショップ:行動分析で考える“SECIが回る文化の作り方”
1月26日(日) 14:00 | 千代田区富士見1丁目3−11 702号室 | By 上司道勉強会
こちらの「上司道」の118回講演会では、私が懇意にしている村上さんも登壇します。まさに野中先生に応援されています。ぜひ次回の講演会にもご参加いただけると嬉しいです。
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レポーター紹介
坂本 樹志
株式会社コーチビジネス研究所 顧問 CBL認定コーチ 中小企業診断士
広島県出身。大学卒業後、大手化粧品会社に入社。財務、商品企画開発、販売会社代表取締役、新規事業開発、中国上海・北京駐在、独資2社設立し総経理等を歴任。その後CBL認定コーチとなり、エグゼクティブコーチとして活動開始。『カウンセリング&コーチング クイックマスター(同友館)』『格闘するコーチング(かんき出版)』など著書・執筆多数