<第13回「廣器会」講演会レポート>

開催日時 2025年4月10日(木)18:30~20:00(懇親会 20:00~22:00)
開催場所 (株)コーチビジネス研究所 飯田橋セミナールーム + オンライン
松本邦裕さんをお招きしての“講演”です。ただ、これまでの12回は、文字通りの「講演」でしたが、この度は、会場が「ミニシアター」となって、松本さんのディレクションによる「参加者全員が心と体を動かす」ユニークな“講演会”となりました。まずは、松本さんのプロフィールを紹介させていただきます。
松本 邦裕(まつもと くにひろ)
三重大学教育学部音楽科 卒
日本演出者協会 ミシガン州立大学文部省交換留学、ブロードウェイダンスセンター特待生、
上海での芸術監督を経て、国内外で多くのアーティストを輩出。
CM、ドラマ、ミュージカルなど演出振付出演多数。
現在、オンラインで声と演技をユニークに指導中。
日本演出者協会員
能美市(九谷焼)観光大使
上海新偶像芸術学院芸術監督1997〜99年
(藤本好一プロデュース 西城秀樹名誉教授)
文化庁主催『演劇大学』講師
文化庁主催『本物の舞台芸術』講師
中部日本高校演劇連盟講師
三重大学 群馬大学 ダンスセミナー
立教大学 シェイクスピア講座 発声ゲスト講師
スタートは「廣器会」主催者の中村智昭さんによる開会挨拶です。
5月以降も、ワクワクずくめの「廣器会」です!
それでは皆さん、時間になりましたので、はじめていきたいと思います。
第13回「廣器会」…学びの会ですが、ご参加いただき、ありがとうございます! 今日は松本さんにお越しいただいています。素晴らしいお話だけでなく、皆さん全員に参加していただくことになると思います。
この「廣器会」は経営者の会です。経営者の皆さんの器を大きくしていこう、というのがテーマです。ただ、単に話をしたり、お酒を飲むというのではなくて、自分の器を広げるためには、どうしたらいいのか… 対話の質も上げていく必要があるんじゃないかな、と感じています。
今日は、6月に講演をお願いしている小山さんにも、参加をいただいています。「茶の心~茶道のなかから経営の心を学ぶ」という内容でお話をいただきます。7月はですね、「禅についてその道の先生の講演」です。8月は「俳句の先生」です。

中村さんから今後の企画スケジュールが発表されると、会場は「お~っ」というリアンションの声に包まれます。
いろいろ準備しています。経営者の器を広げていく…その原点を忘れないでいただきたいなあ、と思います。
ということで、松本さんに…ちょっとハードルを上げさせていただいて…(笑)。
それでは松本さん、よろしくお願いします。

松本さんは、「廣器会」のメンバーです。これまでの「講演会」にも、積極的に参加いただいていますので、皆さんとは顔なじみです。いつも笑顔を絶やすことなく、フレンドリーそのままの松本さんです。

皆さん、いつもお世話になっております。松本邦裕です。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
私の仕事はですね、もともと芸能界の方々のスター性を輝かせる、ということなんです。コロナ以降からは、芸能界以外の業界の方々からも声を掛けていただく機会が増えています。素敵な方々の魅力をですね、個性豊かに、どう発揮していただくか、そのお手伝いをしているんですね。ですから今日は、皆さんが主役です。
それから私に関しては、録音・録画はまったく構いませんので。ただ、皆さんの個人情報とかあると思いますから、そこはご配慮いただいて、ご準備なさってください。
私は現場にお伺いして、お困りごとを聞いて、個別に対応させていただく、ということをやっています。ですからマニュアルはないんですね。ですから、皆さんと一緒に今日のこの場を盛り上げていければ、と思っています。
よろしくお願いします。
「想い」を声と身体に乗せて、流れるようにお話しされる松本さんです。多くの芸能人を輝かせてきた松本さんですから(もともと輝いている芸能人を更に…)、挙措全体が「普通の人とは違う!」…私たち全員が、そのことを瞬時に理解します。
松本さんは、最初に「声」に触れます。
芸能人を輝かせる松本さんは…普通の人とは違う!

<作った声>でやったって長持ちしないんです。身体も壊れますし…その方の持って生まれた声…クセは生育の過程で付いていくわけですけれども、それすらも個性として、プラス思考で楽しんでいただく。仮に<活舌が悪いにしても>それが魅力になる。そういう風にして、今日は気楽にお遊びムードで、お付き合いください。
それではどうぞよろしくお願いします。
なぜ<作った声>と<活舌が悪いにしても>に、<>を付しているのか?
それは、その言葉の時だけ、それっぽい声音にチェンジ(突然)しているからです。<作った声>は、ひっくり返ったような、<活舌…>は、顎が固まってしまったような声音で、松本さんは私たちを驚かせます(笑)。以後、松本さんが声音を変えているシーンは、この<>を使ってまいります。
私たちは、「よろしくお願いしま~す!」と、大きな発声で(見事なユニゾンになっていました)、松本さんに応えます(笑)。
さて、今回の会場は事前に車座で椅子が配置されています。松本さんはぐるりと見渡し、隣同士のOさんとKさんを指名し、「立っていただき、こちらに来ていただけますか」と、声を掛けます。

松本さんは「呼吸」を、深く深く語ります…
スタートは「呼吸」です。この「呼吸」だけで長時間の講義が展開されます。ここからは、松本さんの言葉をピックアップしてみましょう。

・お二人は味方ですか、それとも敵同士ですか(笑 )。 はい、呼吸してください。コツですが、こうして呼吸します。
・自然に呼吸します。いいですか、<トレビア~ン>って、感じで(笑)。
・あなたが吸って…<久しぶりですね>…こうなるわけですね。
・鼻から息をすって、<いらっしゃいませ、いらっしゃいませ…>、こうなると自然な人間関係が醸し出される感じ。繰り返しますよ…
・自分が呼吸するんじゃなくて、相手さまからいただくんです。そのとき相手さまを見ます。目を見るのが辛かったら、おでこでもいいです。名札でもいいです。まあ、あんまり見過ぎると、フェチっぽくなりますから…(笑)
・呼吸だけで人間関係は変わります。いかがですか? 悪用しないでね(笑)。

思わず笑みがこぼれます(笑)。
・まずは、自分の体がリラックスできているかどうか、ここから、私なりにお手伝いしてトレーニングします。
・身体は楽器ですから、呼吸のしやすい楽器にしましょう。自分が呼吸のしやすい楽器だと、周りのスタッフさんも居心地が良くなってきます。
・会長や社長が、いくらニコニコして、<ああ、君たち、好きなこと言っていいよ!>と言っても、空気が心の安全基地になっていなかったら、好きな風に言えないですよね。
・じゃあお二人、お互いに呼吸をもらい合ってくださいね。では…

・いいです、いいです。今日は初めてですから… まず、息は相手からもらう。特に、私たちは舞台に立ったときに、役者が息をするのではなくて、お客さまに息をしてもらうように演技する。これが最高。どんなに緊張していても…
・新人俳優…才能のある人は別ですけど…舞台を観てても、お客さまは疲れるんですよね。役者がお客さまに息をさせてくれないから。「いい作品なんだけど、なんか今日疲れたな。モヤっとするね…」というのは、演技者としては、アウト。どんなに深刻なストーリーであろうが、「今日観てよかったね…」というのが大事なんです。これを皆さんも、ビジネスに取り入れていただけたら、ほんとうに有難いと思っています。
・はい、お二人さん、座って下さい。ありがとうございました。
大きな拍手が起こります。
・では続いて、皆さんご自身のメインテナンスをさせていただきます。実際はメインテナンスだけで90分をかけるのですが、今日は時間が限られていますから、本当にさわりだけです。また機会がありましたら、詳しく紹介させていただきますので。 では…

目を瞑って…松本さんは私たちを瞑想の世界に誘います
・目を閉じてください。自分を身体意識に向けます。まずは足の位置、これは良かれと思ってやっている場合があります。
・心の目で見てください。手の位置… 次は膝の感覚…
・奥歯の力を抜きます。そして、奥歯に力を入れてください。噛んでください。はい、リラックスして、アホ顔になって…だらしない感じ。顎がダラ~ンとしている状態。ちょっと口を開けてください。半開き… 顎が頼りなく感じると思います。いかに私たちは日頃から顎に力が入れているか、ということが分かると思います。

松本さんは、目を閉じている私たちに声を届けます。ゆったりとした時間が流れます。私は何だか催眠術をかけられているような気持ちになってきました。松本さんの抑揚をつけた声音が耳元に届けられます。心地よいですね。夢見心地のような不思議な感覚です。顎を触ったり、押さえたり、夢幻の世界に引き込まれます。
・はい、楽にして目を開けてください。次です。私たちは、特に男性陣は、力を使いたい、という本能がありますから、余計に力が入っちゃうんです。歩くときも。
松本さんは「オス」の口調になって、
<おいっ、おいっ!>
と、ドスを利かせた声でKさんに声を浴びせます。
Kさん、びっくり(笑)。
・いいですか、動物としては「押すか」「引っ張るか」しかないんです。
基本的には…
ここから松本さんの「押す理論」「引っ張り理論」が展開されます。豊富なアクション! 身振り手振り、そして全身を使って私たちに体感を伴ったイメージを届けてくれます。
・私は多くの女優さんを指導しているのですが、押してる力が少し弱くなって、ウォーキングしている場合と、それから、グ~ッと中に引き込んでいる力があって、それが、フッと弱くなった場合では、違ってくるんですね。
・押してる力が弱くなってここにある力と、引っ張る力が弱くなってここにある力…どうでしょう、難しいですか?

「押す理論」「引っ張り理論」をマスターするには、ちょっと時間がかかるかも…
松本さんは、みんなの様子(顔)を見渡しながら、語りを進めます。松本さんの「押す理論」「引っ張り理論」は…ちょっと難しい(笑)。
・難しく考えないで…グッと押せば自分が自立できる。引っ張ると、自立できない。
・スパゲティの真ん中を細い紙で束ねていますよね。そんな感じ。バランスです。植物をイメージしてください。外に伸びてる、外に伸びてる、外に伸びてる、外に伸びてる…
松本さんに生命(いのち)の力が宿っている。
ここで松本さんは、タイプの異なるウォーキングを実際にやってくれました。
女性と男性の歩き方も紐解いてくれます。
・男性は直線的な動きになります。宝塚の男役の方は、そうなっています。それに対して、女性は曲線の動きになります。
いやはや、お見事!
女性と男性の挙措、そして動作の違いは、私たちの脳にしっかり刷り込まれているようです。このあたりは「ジェンダー」の視点では微妙ですが、能、歌舞伎、日本舞踊…身体の動きを伴う古典芸能において、ほんの少し眺めただけで「男性か女性か」を、私たちは同定させているわけです。
・広がっていくと、たおやかになっているのが感じられます。くねくねしているのではなく… 何がいいたいのかと言うと、「いつも自分が広がっている感覚を想って、普段の動きにイメージを持っていただきたい」ということなんですね。緊張を解いている状態です。
・緊張には二種類あります。グ~ッと圧縮する緊張と、伸ばしている緊張。伸ばし続けると、いつか切れます。圧縮すればするほど、いつか粉々になります。どちらも、毒にも薬にもなりません。ちょっとお見せしますけれども、まずはふにゃふにゃ、脱力です。
・腹筋が横に広がって、広がって、広がって… グ~ッと。マントが広がっているような感じです。
松本さんは立ち上がります。すごく自然な立ち上がり方。
・こうやって立ち上がると、腰をいためません。おかげさまで私、今年72歳になりますけど…
一同、「ええ~っ!!」
・ですから、皆さんも生活にヒントとして取り入れていただくと、すごく嬉しいんです。
– 後編へつづく –

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レポーター紹介
坂本 樹志
株式会社コーチビジネス研究所 顧問 CBL認定コーチ 中小企業診断士
広島県出身。大学卒業後、大手化粧品会社に入社。財務、商品企画開発、販売会社代表取締役、新規事業開発、中国上海・北京駐在、独資2社設立し総経理等を歴任。その後CBL認定コーチとなり、エグゼクティブコーチとして活動開始。『カウンセリング&コーチング クイックマスター(同友館)』『格闘するコーチング(かんき出版)』など著書・執筆多数
WEB構成
水野 昌彦
アイデアルブランズLLC 代表 ブランド・デザイナー 中小企業アドバイザー
美大卒業後プリンター・電子機器メーカー、独立デザイン事務所を経て自動車メーカーデザイン部でカーデザインに従事、エンブレムデザイン全般担当を契機としてブランディングに深く関与。ブランド体系構築をリーディング。2021年独立・法人化、代表に就任。「かんがえ方のデザイン」を提唱し中小企業のブランド・デザイン振興を支援している。
撮影
池上 仁美
インフラ系会社の購買部門で契約業務の他、経理・総務を歴任。日商簿記2級、ビジネス法務2級
パラレルキャリアで人物写真撮影(イベント、スナップ、スタジオ)、西洋占星術、ダンス(ヒップホップ、ロックダンス)など★魂の煌めきを照らす仕事★で元気とパワーを届けている。