<第14回「廣器会」講演会レポート>
カエルンさんは顔出しNGなのでアイコンになってます。ご了承ください。

開催日時 2025年5月8日(木)18:30~20:00(懇親会 20:00~22:00)
開催場所 (株)コーチビジネス研究所 飯田橋セミナールーム + オンライン
– これまでの前編はこちら –
カエルンさんの進行はリズミカルです。ここで事前にいただいている1時間半の流れを紹介しておきましょう。本来はもう少し時間をかけての講演のようですが、廣器会メンバー(経営者は気が短い?)に対応してくれているようです(笑)。
カエルンさんによる「TRIZ」の展開
- イントロダクション: 経営における「矛盾」と「Why」の重要性
- TRIZワーク Step 1:「最悪の結果」を生む行動リストアップ(AI活用)
- TRIZワーク Step 2:「実はやってしまっていること」の内省(手書きワーク)
- TRIZワーク Step 3: 矛盾を乗り越える「次の一歩」発見(AI・グラレコ活用)
- 振り返り: TRIZ思考の応用と実践プラン策定
ここで、「TRIZとは?」について、生成AI(Copilot)の回答を引用しておきます。あくまでも一般的な捉え方です。カエルンさんは、参加メンバーの特性に合わせてアレンジ(カエルン流柔軟対応)されています。
TRIZ(トゥリーズ)は、ロシア生まれのイノベーション手法で、問題解決やアイデア創出に役立つ理論です。基本的には、「創造性はパターン化できる」という考えに基づいており、過去の技術的発明を分析して抽出された「発明原則」を活用します。
例えば、特定の問題があった場合、それをTRIZの「矛盾マトリックス」で分析して、最適な解決策を導き出す方法があります。この手法は製造業や製品設計など、様々な分野で活用されています。
ペアタイムが終了すると、グループワークに移行します。ディスカッションテーマは、リスクを回避し、価値を最大化する「次の一歩」の発見、です。

次はですね。待ちに待ったグループワークです。
グループで進行係、司会、タイムキーパー、記録係、を最初に決めてください。とりあえず時間を10分とります。皆さんで話し合いをしてみてください。そしてまとめてください。発表者の人に1分で、出来上がったのを発表してもらいます。では10分計りますので、議論して、チームの中の結論を紹介していただきたいと思います。はい、それでは、よ~いスタート!

(10分経過)

はい、終了です。さて、どちらのチームが最初に発表されますか… ジャンケンしましょう。
ジャンケンに勝った窓側のチームが、「最初に発表します」と宣言し、先行が決まりました。発表者はKさんです。

リスクとしては「情報漏洩」というのが、一番に挙がっています。他には「根拠のない情報」であったり、「使いこなすためにすごく時間を使ってしまう」ですとか、「それを使いこなせそうな人とそうでない人が分かれてしまい、仕事が属人化してしまう」など、いろいろ挙がりました。
「情報漏洩が一番気になる」という内容について、それに対する解決策を話し合ったところ、「どこから先が情報漏洩のリスクが高まるのか、それを知る必要がある」、と展開しました。「それに対するガイドラインをつくっていく必要がある」という流れです。さらに「それを人間がAIを制御する」。そして「それをAIに制御させる」、などのアイデアが出ています。以上です。
会場から「すばらしい!」との声がかかります。
ここで、ドア側のチームのTさんから、ユニークな質問が… 座が和みました(笑)

うちのチームでも情報漏洩がテーマになっています。その際、Iさん(男性)が「そもそも情報漏洩して何が困る?」と、皆が「うっ…」と、感じるコメントも登場して、盛り上がりました(笑)。いかがでしょうか?
窓側チームの誰かが「Fさんが応えま~す」と、Fさんに声を掛けます。

実際に僕の会社でやってる内容の「プラントの設備設計」に関することなのですが、原子力施設のプラントも含まれます。原子力設備で一番怖いのは、テロリストなどに情報が流れてしまうことなんですね。どこから入ってセキュリティを破って、中心部に入っていくルートとか、プラント全体を司っている制御室ですね。そちらに入っちゃって、運転自体を止められてしまうとか、そういったこともなりかねない…
答えになっていますでしょうか?
同じグループのMさんが「そのルートを生成AIに質問したりして…」と、まぜっ返し、参加者の笑いを誘います。「廣器会」はいい…(笑)。
成熟した大人たちが集う「廣器会」…手前味噌かな?
さて、廊下側の後行チームです。Tさんが発表します。

われわれはですね。AIと人間の距離感が話題になっています。AIとコーチングのコーチの関係性というか、「間合い」みたいな話が議論されました。
コーチングの人間観は、相手の中に答えがあるという視点です。でも、「AIの中には答えがない」…どなたかがこの「カッコいいフレーズ」を言葉にされました(笑)。なので、判断や責任ということについては、今のところ「人間の仕事」であり、それを補助してもらう、という役割を「AIに与える。
AIを扱う人は、リテラシーを高めて、違う価値観を見つけていく…ということをやっていけばいいのではないか、ということです。この先AIが「共感」ということになっていくと、また違ってくるかもしれませんが。
こちらのチームにも大きな拍手が起こります。質問が出ます。

コーチとAIの比較の話になってきましたけど、「コーチは答えを言わない人」と理解していますが… そのあたりについて、見解はいかがでしょうか?
エグゼクティブコーチの資格を持つOさんが応えます。

コンサルは答えを教えちゃうんですけど、コーチングは「クライアント自身が答えを持っている」と捉えます。「その答えを引き出して、そこからご判断につながる支援をする」ということなんですね。この点は、AIにはなかなかできない領域だな、と感じています。ですから、そのあたりのポジション取りをする、というのが私たちの答えです。
Iさん(日本エグゼクティブコーチ協会会長)、合っていますか?

続いて女性のIさんがフォローします。

AIは責任が取れない。たとえばコンサルに業務を依頼し、誤った結果につながった場合と違って、AIにはそのことを糾すことはできない。「そこは人間に委ねられるところだよ」と。そういったところで、AIのやるべき領域と人間のやるべきところを切り分けて、リスクを回避しながら、最大化できる関係性を見出していく、という考え方が私たちのチームの見解でした。
Iさん(男性)のコメントも続きます。

模範解答があるものについては、AIは徹底的に使えます。でも、コンサル案件なんていうのは、本当は模範解答がないはずなんですよ。ウィキッドプロブレム1のはずなので、答えがないんです。AIの間違った使い方というのは、答えを求めてしまうから…「AI使えないよ!」って、なるんです。
本来答えがない問題は、人間が解けばいい。判断すればいい。そのあたりのところが、どなたかおっしゃっていた「AIを使う人のリテラシーが重要だよ」、ということになるんだろうな…そんな内容をチームで話し合っています。
経営者である参加者の活発なコメントが飛びかいます。そして、皆が何となく感じている疑問を代表するようにNさんが、質問します。

ワークショップの進め方なんですけど、リベレイティング・ストラクチャー、そしてトゥーリズは「体験」ということですが、どのようにファシリ―テーションをすると、効果的なワークショップになっていくのか、そのあたりのことが知りたいのですが…
カエルンさんは「待っていました」というカンジで…

はい、とってもナイスな質問です。
トゥーリズ(TRIZ)を用いたワークショップは、参加メンバーが、「似たような仕事をしているんだけど、少しやっていることが違う」、という場合に効果を発揮します。参加者の取り組んでいる仕事のベースを「ある程度共有している」というところかポイントなんですね。「なるほど…そう言う見方があったのか…」と、気づきにつながるんです。参加者同士の保有する情報にデバイドがありすぎると、対話へのコミットメントが、イマイチになってしまいます。他人事になるんです。そうなると、参加していてもつまらない。

似たような職種、似たような仕事をしている同士なんだけど、会社内で情報共有ができる環境にない、ちょっとズレている。その関係性によって、コミットメントできるし、俯瞰につながります。「なるほど、そうなのか…」と、納得できる。そういうTRIZの使い方が王道です。
「廣器会」の場合、みなさんの能力が高いので、1時間半という限られた時間であっても「無理目」を承知の上でやっています。
あと、リベレイティング・ストラクチャーについて、改めて説明しますね。ええっと…これなんです。

最初に「さらり」と紹介したシートを使って、カエルンさんの「熱き想い」が語られます。講演のクライマックスですね。
全員でやってもらう。一応、司会、記録者、発表者とかの役割を決めてください、と伝えていますが、時間経過の中で、そうではない人が勝手に役割をやっている、というケースが多いんです。役割が変わっているんですよ。リベレイティング・ストラクチャーは、それを正解とします。
時間が迫ってくると、決められた役割とは別に、得意分野と言うか、自分らしいことをやり始めるんです。そういう流れになっていくんです。
結局のところ、リベレイティング・ストラクチャーとは「許容可能な均衡の探求」なんです。僕らくらいまでの年代は、「二項対立」「勧善懲悪」で、裁きがちです。でも今は、ダメなんですよね。何かのハラスメントが起った場合「両方が歩み寄る」、ということを取ります。
要は、悪い人がいるわけではなく、その状態をお互いにみんなで認識し合って何とかしないといけないね、みんなで変わり合うしかないよね、っていうところが必ず最終ゴールになっているんです。
ですから、車の事故のように、10対90とかじゃないんです。30対70じゃないんです。「50と50なんだ!」ということでやるんです。
お互いに変らないとこの問題は解決しないんだ、ということを前提としてリベレイティング・ストラクチャーは進めます。置かれている状態が違うんだから、当然、考えているコトとか違います。ジレンマが起こる、葛藤が生じる…じゃあそのときどうするんだ…ですから「50 50」を前提にスタートします。「50悪い」ということではなくて「50自分が近寄れるんだ」と思ってやっていくんです。このリベレイティング・ストラクチャーという仕組みが、なかなかよくできていて、勝手にそれが起こるようになるんです。
画面は「ワークショップで得られること」に変りました。


真ん中に描いているのが「許容可能な均衡の探索」です。何かジレンマがあるっぽい問題を見つけたら、生成AIに「このキーワードを入れて、解決方法を出してほしい」といった風にやると、綺麗に出してくれます。「ああ、なるほど、そういう風に考えるのか…」みたいな話になっていくわけですね。
シートが変わります。1時間半の講演のまとめです。

最後にカエルンさんは、「ここからは僕の宣伝なんですけど…」と、2枚のシートで「グラフィア・アカデミー」について紹介されました。冒頭で主催者の中村さんが、カエルンさんのことを「グラレコ界の神様」と紹介していますが、「グラレコ」を使った独自の世界を展開されています。


私はこの後の懇親会で、カエルンさんと、さまざまなことを語り合っています。「実はアニメーターになりたかったんですが、それだと収入が得られないんで、SEの道に…」と、昔話も披露していただきました。ガンダムが始まった時期の話でも盛り上がっています(笑)。飄々と話されます。カエルンさんから伝わってくる「自然体の生き方」に、私は共感し、感銘しています。
カエルンさん、ありがとうございました!

– これまでの前編はこちら –
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レポーター紹介
坂本 樹志
株式会社コーチビジネス研究所 顧問 CBL認定コーチ 中小企業診断士
広島県出身。大学卒業後、大手化粧品会社に入社。財務、商品企画開発、販売会社代表取締役、新規事業開発、中国上海・北京駐在、独資2社設立し総経理等を歴任。その後CBL認定コーチとなり、エグゼクティブコーチとして活動開始。『カウンセリング&コーチング クイックマスター(同友館)』『格闘するコーチング(かんき出版)』など著書・執筆多数
WEB構成
水野 昌彦
アイデアルブランズLLC 代表 ブランド・デザイナー 中小企業アドバイザー
美大卒業後プリンター・電子機器メーカー、独立デザイン事務所を経て自動車メーカーデザイン部でカーデザインに従事、エンブレムデザイン全般担当を契機としてブランディングに深く関与。ブランド体系構築をリーディング。2021年独立・法人化、代表に就任。「かんがえ方のデザイン」を提唱し中小企業のブランド・デザイン振興を支援している。
撮影
Jin-hitomi
インフラ系会社の購買部門で契約業務の他、経理・総務を歴任。日商簿記2級、ビジネス法務2級
パラレルキャリアで人物写真撮影(イベント、スナップ、スタジオ)、西洋占星術、ダンス(ヒップホップ、ロックダンス)など★魂の煌めきを照らす仕事★で元気とパワーを届けている。