「信頼を築く経営者の流儀~『茶道思考』で考える、調和と品格のコミュニケーション」… 小山匡子さんをお招きして -後編-

<第15回「廣器会」講演会レポート>

開催日時 2025年6月12日(木)18:30~20:00(懇親会 20:00~22:00)

開催場所 (株)コーチビジネス研究所 飯田橋セミナールーム + オンライン

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小山さん

利休のお弟子さんが「茶道で大事なことって何ですか」と質問したところ、7つの言葉をおっしゃいました。

利休の哲学「七則」

  1. 茶は服のように
  2. 炭は湯の湧くように
  3. 花は野にあるように
  4. 夏は涼しく冬は暖かに
  5. 刻限は早めに
  6. 降らずとも雨の用意
  7. 相客に心せよ
小山さん

聞いた弟子は、「こんな簡単なことでしたら、だれでも出来るでしょう」と言う。すると利休は「これが本当にできるのならば、私はあなたの弟子になりましょう」と、おっしゃったのです。深いですよね。

小山さんは、7つについて、一つひとつ丁寧に、その意味を語ります。「利休のすごさ」が伝わってきました。実に『茶道思考』です。資料については、うち「七則の1」と「七則の6」を紹介させていただきます。

続いて講演は、アジェンダの5番目「もてなし」です。

小山さん

「茶道とは『もてなし』の美学である」と、書いてあったんですよ。辞書で調べました。一番売れている「三省堂新明解事典」には、「心をこめて」が2回出て来ました。
「持てなす」の「なす」は「達成する」です。私のもっている何かで「成す」わけです。

私は、小山さんの講演スタイルで気づいたことがあります。茶道は室町時代から戦国時代にかけて完成するわけですが、歴史を背負っていることもあり、特殊な「茶道の用語」も存在します。小山さんは、その一つひとつについて、疑問を解き明かすべく、「原典」に遡って調べられている。この「もてなし」だけでなく、さまざまの用語について、このスタイルは一貫しています。
「受け」を狙って、まるで「自分の言葉」であるかのように、話を操る講演者もいますが、小山さんは違っています。博士号をもつ科学者の相貌が、こうやって顕れるんだなあ…との想いで、私は聴き入っています。

小山さん

一人称の「もてなし」に「お」をつけるのはいかがなものか、と数年前までは言われていました。ところが最近はですね、102歳の裏千家の…… ご本人が「おもてなし」って言ってるんですよ(笑)。

小山さんは、要所で私たちに笑いを届けてくれます。そして、ワークを合間に挟み、私たちを飽きさせません。

【ワーク「和敬清寂」~チェックリストで自己診断】

【ワーク「もてなし」~あなたが“もてなされた”と感じた体験を語ろう】

それぞれA4のペーパーが別途用意されており、ビジネスの現場で活用できます。「廣器会」は経営者がメンバーですから、持ち帰って「会社でやってみよう…」と、イメージを膨らませているのが伝わってきました。

小山さんは、有名な「秀吉が信長の草履を懐で温めた」という逸話を例に、「もてなし」をリフレーミングします。

この話は通常、秀吉の「もてなし力」をクローズアップする視点で語られるわけですが、小山さんは信長のリーダーとしての能力に注目します。リーダーとしての「気づく能力」です。つまり、「心を込めた行動を気づいて共感する力」です。
小山さんは、ビジネスコミュニケーションの「もてなし」を次のようにまとめます。

受け手の共感力・気づく力も大切

気づいたら言葉で伝える

  • 感謝
  • 褒める
  • 認める
  • ねぎらう

そして、「コミュニケーション」と「茶道の精神」を結合させます。講演はアジェンダの最後、「茶道思考とは」としてまとめられました。

小山さんの3月22日に投稿されたFBに、ご自宅の「茶室」を見つけました。コメントの後半と、画像を紹介させていただきます。とても素敵です。

【ひな祭り茶会のご報告🎎🍵】

“ 私が提唱する「茶道思考」では、茶道の精神を通して、ビジネスパーソンがより良い人間関係を築くお手伝いをしています。
おもてなしの心、整える力、間を大切にする感覚——すべてがビジネスの成功につながる要素です。
茶室の静寂の中で、自分と向き合い、人とのつながりを深める時間。皆様の仕事にも活かしてみませんか?
最後になりましたが、茶会にお越しくださった方々、ありがとうございました。”

講演そのものは、以上です。小山さんは「お茶は出してくれないんだ~と、感じた方はいらっしゃると思いますので、茶道についての知識を、最後に紹介します」と、いくつか準備してくれていました。「そうなんだ…」と、合点です。

今回の講演は「廣器会特別バージョン」の超圧縮版ですが、本来は「4回」と「7回」のツー・バー―ジョンで展開されているようです。「講座紹介」も資料に含まれていますので、最後に紹介させていただきます。

残りの時間は「質疑応答タイム」です。すべて紹介したいところですが、その中のKさんとの「問答」を紹介させていただきます。

Kさん
「和敬清寂」なんですけど、僕が難しいと思ったのは「清」なんです。「きよらか」…ついつい下心が出ちゃうんで(笑)。「きよらかさ」っていうのは、どうやったら身に付くんでしょうか? 茶道の中で、何かあるとしたら、教えていただきたいのですが。

小山さん

お茶の世界だと、「お掃除しましょう」というのがあります。そうすると心が清らかになる。

Kさん

確かに!

小山さん

お客様をお迎えするんだから、ちゃんと… そこが一つ。
もう一つは「質問」。わからなかったら、空気を読みながら茶席でも質問する。掛け軸の文字がどうも読めない。そんなとき、変に抑えないで質問する。それが自然に言えるかどうか… そういうところにも表れてくると思います。
あとは、「ピュアだな」と思う人と一緒に居る。

Kさん

は~…なるほど、なるほど。ありがとうございます。
あと、もう一ついいですか? 戦国時代に「茶の湯」を武将がやっていたわけですけど、信長や秀吉…ああいう人って、人を切ったり、荒々しいわけですよね。なんで「お茶」をやっていたのか…さっきの「おちつく」とか、わかるような気がするんですけど、「ほんとなのか?」っていう穿った感じもしていて(笑)。なんで彼らは、「お茶」をやっていたのか… ひょっとして、信長とかがやっていたから、忖度したんじゃないか、とも思っちゃたりするんですけど、本当に彼らは何を求めていたんでしょうか。

小山さん

忖度したかもしれないですけど、私なりの答えは… みなさん、普段ゴルフなさいません? 上司から薦められたとか、ありませんか? ビジネスコミュニケーションをとる場として、ゴルフってあると思うんです。あと、パターとかすごく精神統一になりますよね。
というのと同じように… ゴルフに喩えましたけど、「お茶」も、何かビジネスを回していく上で、大事なツールだったのかな…と思う時もあります。

周囲から、「う~ん…」「ふ~む…」といった声が聴こえてきました。

Kさん

私は「お茶」をやったことがないんで「本当に落ち着くんだろうか…」と、思っちゃうんですね(笑)。

小山さん

ここで科学者としての小山が出て来るんですけども(笑)、抹茶って落ち着く成分が入っているんですね…

誰かが…「抹茶ってカフェインも多いですよね」と質問します。

小山さん

そうなんです。カフェインの興奮作用と、テアニンという物質の鎮静作用とが、拮抗しているので、お茶を飲んでも大丈夫。

Kさん

あ~そうなんですか、へ~っ…

小山さん

苦くなるカテキンの全体がテアニンのうまみ成分であり、ちょうどいい具合のスーパーフードとしてたしなむことができます。

Kさん

なるほど…… ありがとうございます!

「質疑応答タイム」は盛り上がります。さらに続くのですが、今回の実況中継風レポートは、これにて終えることにしましょう。

– これまでの前編はこちら –

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次回廣器会は・・・

「AI時代の静かなるリーダーシップ」
-AI時代のリーダシップとイノベーションの可能性を探る-

-廣器会#16

プロフィール

三木康司氏

株式会社enmono代表 富士通株式会社に入社。

慶應義塾大学にて政策・メディア修士号を取得後、博士課程へ進学、ITベンチャー役員を務めた後、事業悪化に伴いリストラされる。ショックから立ち直るため、毎朝の坐禅を開始。自分の心のケアと新事業のアイディアを坐禅を通して着想した経験をもとに、マインドフルネスを活用したイノベーション経営手法「zenschool」の提供開始。2016年1月「ガイアの夜明け」に報道される。2017年9月、北鎌倉の建長寺にて日本初の国際マインドフルネスカンファレンス、「Zen2.0」を主宰、国内外のスピーカーを集め高い評価を受ける。8年連続で開催し、現在では世界最大の禅とマインドフルネスの国際カンファレンスに成長した。

鎌倉を禅とITの融合したマインドフル・シティにするために活動している。

2024年3月に、スゥエーデンのストックホルムにて「AIとIKIGAI」にて招聘基調講演(英語)をおこない、2923年7月には世界最大級のマーケティングフォーラム、コトラー・マケティングサミットにて「AIとIKIGAI」について講演(英語)した。


詳細情報はこちら
https://www.kouenirai.com/profile/8426

■内容

生成AIが業務効率を加速する今、鍵となるのは“静かなリーダーシップ”。本講演では
1. AIトレンドと世界経済への影響
2. 静かなリーダーの4要素(深い傾聴・謙虚な共感・内省による洞察・粘り強い行動)
3. 禅的マインドフルネスを活かした実践ステップで生み出されたイノベーションの具体事例
をご紹介し、そのプロセスからAI時代に経営者として求められるリーダーシップについて学ぶ。

■開催日時
2025年7月10日(木)18:30-20:00

■開催方法
リアル会場開催&オンライン同時開催

■会場
株式会社コーチビジネス研究所
東京都千代田区富士見1-3-11 富士見デュープレックスビズ702号室

お申し込み・詳細はこちらから

第16回学びの会合 (経営者のための廣器会)

https://peatix.com/event/4458313

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レポーター紹介

坂本 樹志

株式会社コーチビジネス研究所 顧問 CBL認定コーチ 中小企業診断士
広島県出身。大学卒業後、大手化粧品会社に入社。財務、商品企画開発、販売会社代表取締役、新規事業開発、中国上海・北京駐在、独資2社設立し総経理等を歴任。その後CBL認定コーチとなり、エグゼクティブコーチとして活動開始。『カウンセリング&コーチング クイックマスター(同友館)』『格闘するコーチング(かんき出版)』など著書・執筆多数

WEB構成

水野 昌彦

アイデアルブランズLLC 代表 ブランド・デザイナー 中小企業アドバイザー
美大卒業後プリンター・電子機器メーカー、独立デザイン事務所を経て自動車メーカーデザイン部でカーデザインに従事、エンブレムデザイン全般担当を契機としてブランディングに深く関与。ブランド体系構築をリーディング。2021年独立・法人化、代表に就任。「かんがえ方のデザイン」を提唱し中小企業のブランド・デザイン振興を支援している。

撮影

Jin-hitomi

インフラ系会社の購買部門で契約業務の他、経理・総務を歴任。日商簿記2級、ビジネス法務2級
パラレルキャリアで人物写真撮影(イベント、スナップ、スタジオ)、西洋占星術、ダンス(ヒップホップ、ロックダンス)など★魂の煌めきを照らす仕事★で元気とパワーを届けている。

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