「出会いに感謝し、対話で深める」~人と企業の成長をつなげる“営業の要諦”

── 室谷健一郎さんをお招きして ─

<第30回廣器会レポート>

開催日時  2026年9月10日(木) 18:30~20:00(懇親会 20:00~22:00)

開催場所 (株)コーチビジネス研究所 飯田橋セミナールーム + オンライン

第30回の廣器会は、室谷健一郎さんを講師にお迎えしました。最初にプロフィールを紹介させていただきます。(講演資料より)

PROFILE

室谷 健一郎(むろや けんいちろう)

出身
東京都
経歴

第一三共株式会社にてMR(医薬情報担当者)、
法人営業(卸担当)、マネージャーを経て、本社流通政策部で戦略立案、業界活動(日本製薬工業協会)に従事。
2026年7月~独立し中小企業診断士、プロコーチとして活動中コーチビジネス研究所取締役

さいたま市産業創造財団 医療プロジェクトマネージャー

資格等

中小企業診断士、MBA、医療経営士2級、登録販売者、 CBL認定アソシエイトコーチ、GCWAファシリテートコーチ

九州情報大学中小企業経営研究センター客員研究員

趣味

全国の居酒屋巡り

「コンサルティング」と「コーチング」の二刀流で多くの企業様で経営力再構築及び対話型組織開発に関わる伴走支援を行っています。

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室谷さんは製薬会社の第一三共で32年間にわたりMR(医薬情報担当者)、法人営業、管理職、本社流通政策部門などを経験され、今年6月に独立されています。現在は中小企業診断士、そしてコーチビジネス研究所の取締役として活躍されており、さいたま市産業創造財団では医療プロジェクトマネージャーも務められています。

今回のテーマは“営業の要諦”です。もっとも、講演を聴き終えたあとに残ったものは、営業という言葉を超えて、「聞くこと」「人を育てること」、そして「自分自身が変わっていくこと」…という、全方位の内容でした。室谷さんの32年間の歩みをたどりながら、「人生とは?」を一緒に考える濃密な時間となりました。

💡今回から参加者の皆さんに感想を伺ってみました。末尾のアンケート結果も併せてご覧ください。

室谷さんから提供いただいたスライド資料(全61頁)を、一部紹介しつつ、レポートさせていただきます。

室谷さんはスタートで、「くすりと、聞いて何を思い浮かべますか?」と、アンゾフのマトリクスを援用し、説明してくれました。その左隣には、昭和世代の私にとってとても懐かしい画像が貼り付けられています。

テレビのコマーシャルソングが耳にこだましました(笑)。リゲインです。昭和を象徴する「24時間戦えますか」のキャチコピー! 「長時間働くこと」「ひたすら成果を追い求めること」が、当たり前のこととして、受けとめられていた時代…と、思い返しています。室谷さんは、私よりお若いですが、どうもその時代に染められていたようです(笑)。

医薬品営業という少し特殊な世界

今回のお話を理解するうえで、製薬業界の特殊性も興味深いものでした。私たちは薬を病院や薬局で受け取ることが「当たり前」のこととして暮らしています。しかし、その裏側にどのような流通が存在しているのか…? 室谷さんはMR1として医師や医療従事者と向き合い、その後は卸会社を担当する法人営業へと進まれます。いずれの話も、ほとんど知ることのない、興味深い世界です。私たちは、室谷さんの話に引き込まれます。

「医療用医薬品の価格そのものは国が決めている」、したがって「価格交渉ができない」「さまざまな規制が存在する」……いずれも「へーっ、そうなんだ」と感じされる内容です。この国の医薬品の流通は、メーカー、卸、病院、薬局の間に張り巡らされた巨大な(かつ複雑な)仕組みが存在していることを、改めて実感させられます。

売れていた“営業”が、売れなくなった!?

室谷さんは新人時代、幸運にも主力新薬の発売と重なったそうです。薬の性能も高く、期待も大きい。行けば売れる……そんな状況だったと語ります。ところが数年経つと、状況が変わります。それまでのようには売れなくなったのです。

市場は成熟する。競合も増える。担当エリアの人口も減少する。ところが周囲を見ると、新製品があるわけでもないのに成果を出している営業担当者がいる。

「なぜだろう?」

室谷さんは、自分の営業スタイルを見直し始めます。振り返ると、「自分は薬の説明ばかりしていた」とのこと。「製品の特徴」「競合する薬との違い」「会社として伝えたいこと」…いずれもが大切な情報です。けれども、「そればかりだった」と。そこで室谷さんは、お医者さんへの最初の問いを変えました。

「先生、何かお困りのことはありませんか?」

すると、返ってくる話が変わってきたのです。患者さんのこと。スタッフのこと。病院経営のこと。薬とは直接関係のない話も次々に出てくるようになったそうです。

私はこの話を聴きながら、コーチングのことを考えます。真に耳を傾けてくれる人には、それまであまり話したことのない“本音”を思わず言葉にしてしまう。人が等しく心に抱く本質です。医師も経営者も変わらない。ただし、医師や経営者は仕事柄、日常的に「鎧をまとっている」。その鎧は硬く頑丈であり、脱ぎたくてもなかなか脱ぐことができない。

室谷さんは後に、コーチングを深く学び、現在はコーチビジネス研究所の取締役としてエグゼクティブコーチングの普及に尽力されています。営業の(しかも特殊な)現場体験は、室谷さんにとって「気づきの宝庫」だったようです。

「他社の薬を勧める」という選択

室谷さんの話で印象的だったのは、「自社製品にこだわらなかったこと」です。患者さんのことを考えると、他社の薬の方が良い場合もある。そのような場面では、あえて競合メーカーの商品を勧めたそうです。営業であれば、自社の商品を売りたい。そう考えるのが普通です。ところが室谷さんは、患者さんと医師にとって何が最善なのかを優先しました。すると不思議なことに、結果として信頼が生まれ、長いお付き合いにつながっていったそうです。室谷さんの話を聴いていると、「営業とは信頼を育てる営み」であることが伝わってきます。

出入り禁止事件!

講演のなかで最も会場を沸かせたエピソードです。担当を引き継いだ医院へ初めて挨拶に行ったときのこと。いきなり先生から、「出入り禁止だ!」と告げられます。初対面で、理由がまったくわからない???

私は室谷さんの次の言葉を待ちます。いろいろ想像してみました。さて、室谷さんはいかなる行動に出たのか?

室谷さんは翌日、再度その医院を訪ねます。受付に名刺を出し、1時間待ったそうです。患者さんはいません。受付の方も帰ってしまった。待合室には自分だけ。それでも待ち続けた…… そしてようやく診察室へ通されます。

先生の第一声は、「何しに来たんだ!」でした。室谷さんは、素直に訊ねます。「先生、なぜ出入り禁止なんですか?」、すると空気が変わったのですね。そこから長いお付き合いが始まったと語ります。あとからわかったのは、その先生は新しい担当者を、そうやって必ず試していたとのこと(会場から、「ええっ?」の声が、そして笑いが広がります)。

「相手を知ろうとする」「分からないことを素直に訊く」。簡単なようで、なかなかできることではない。私たちは気づかされます。室谷さんの誠実な心根が相手のこころを溶かしていった・・・・・・

真のナンバーワンとは何か?

室谷さんは、やがて管理職になります。しかし、そこには別の苦しさがありました。「数字」です。「毎月の売上」「半期目標」「年間目標」。製薬業界は、極めて厳しい競争の世界です。会社全体が数字を追い続ける。部下も追い込まれる。管理職も追い込まれる。顧客との関係も苦しくなる。室谷さんは、「バッドサイクルでした」と振り返ります。

そんなある日、長い付き合いのある地域卸の社長さんから言われたそうです。「こんなことやってて第一三共は真のナンバーワンになれるんですか?」 重い一言です。国内売上トップを目指していた時期でした。その社長さんが見ていたのは売上だけではありません。人であり、社員であり、取引先との関係でした。そして「会社の未来」を。室谷さんは、その言葉にハッとさせられたと語ります。

人を育てるということ

「人が育っていなかったんですよね」。室谷さんは会議のやり方を変えます。問いを増やしたそうです。詰問する会議から、自分たちで考える会議へ。部下に研修も担当するよう働きかけます。

「自分で調べる」「自分で学ぶ」「自分で伝える」

最初は戸惑いもあったのでしょう。けれども次第に変化が生まれます。部下同士の学びが始まる。お客様との関係も深まる。部署の壁を越えたつながりもできてくる。

「関係の質」2が向上していった。バッドサイクルからグッドサイクルに変化していく… 会議というと、どうしても報告や指示が中心になりがちです。しかし室谷さんは、「問い」を大切にしました。そのことによって、チームのみんなは、自分で考え始めるようになったそうです。

そして、エグゼクティブコーチの室谷さんならでの想いが伝わってくるスライドが登場します。キーワードは「対話」。

「聴くから話せる」

講演の終盤で語られた(繰り返し)言葉です。「聴くからしゃべれる、話せる」。本当にその通りだなあ~という思いが会場に広がります。

営業という言葉は、「説明する」「提案する」「説得する」という行為がイメージされます。けれども室谷さんのお話は、その逆でした。「まず聴く」「相手を知る」「困りごとを訊ね耳を傾ける」…そこから初めて、本当に必要な言葉が生まれてくる。テーマは“営業の要諦”ですが、組織づくり、企業経営…あらゆる世界に広がっていくプリンシプルであることが伝わってきました。

  1. MRとは、医薬品の有効性や安全性などの情報を医師や薬剤師などの医療関係者に提供する「医薬情報担当者(Medical Representative)」のことです。製薬企業の営業部門などに所属し、薬の適正使用と普及を主な目的として活動します。  ↩︎
  2. 「関係の質」とは、MIT(マサチューセッツ工科大学)組織学習センターの共同創始者であるダニエル・キム氏が提唱した「成功循環モデル」において、組織やチームを構成するメンバー間の関わり合いや信頼の度合いを示す最も重要な起点となる要素です。  ↩︎

室谷健一郎さん、ありがとうございました!

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<受講者アンケート紹介>(WEB担当コラム)

皆さんこんにちは、WEB担当のまさっちです。今回からリアル参加された参加者さんにアンケートを取ることにしました。このコラムではその結果を一部紹介したいと思います。回答率は、

約68%

でした。

参加された理由(n=13)

講演内容の満足度(n=13)

Aさん

営業が、単にモノを売るだけでなく、関係を築くものであると、物語と共にわかりとても勉強になりました。

Bさん

今までセールスも営業も体験したことがないので、実体験からの学びを分かりやすく楽しく伝えていただきありがとうございました。特に出禁になったあとのエピソードはこれからとりいれてみたいことの一つです。

Cさん

伝えると問うの境界にひとつの解を得ることができました!ありがとうございます

Dさん

営業のプロから「意味」のお話しが聴けて嬉しかったです。世の中には「売り込み」が溢れていますが、売り込まれる側の立場になって考えてみればわかることなのに、ちっともなくならないのはそれなりの効果があるからなのか?あったとしてもそれは一過性のものでしかないと思います。関係性こそ継続性の肝ですね。

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次回廣器会は・・・

俳優・声優として歩んできた道~表現者として大切にしていること~
俳優・石野竜三さんをお招きして
-廣器会#31-

石野 竜三 氏

今回は、俳優・声優をはじめ、歌手、演劇講師、舞台演出家、脚本家として幅広く活動されている石野竜三さんをお迎えします。
異なる業界や文化で生きる方の経験や価値観に触れることは、自分自身の仕事や生き方を見つめ直すきっかけになります。
石野さんは、どのような道を歩んで俳優・声優になられたのか。そして今、表現者として何を大切にされているのか。
これまでの歩みや仕事への思いを伺いながら、プロフェッショナルとして生きることについて、みなさんと考える時間にしたいと思います。
お話の後には、参加者のみなさんからのご質問にお答えいただきます。
ぜひ、ご参加ください。

■プロフィール

石野 竜三(いしの りゅうぞう)
俳優・声優・歌手・演劇講師・舞台演出家・脚本家。
13歳でギターの弾き語りを始め、歌手を目指すも、YAMAHA主催のポップコン終了を機に挫折。研究者を目指して東京農業大学に進学するも、20歳で声優の養成所に通い始め、25歳で俳優・声優としてプロデビュー。
2012年より、講談・落語・浪曲に続く「第4の一人語り芸」として、【語り芝居】を世に定着させることをライフワークに活動中。

【主な出演作品・活動】
・「新機動戦記ガンダムW」張五飛
・「戦国BASARA」長曾我部元親
・「マペットシリーズ」ジャニス、リゾ
・「きかんしゃトーマス」ソルティー、デン
・「デュエルマスターズビクトリー・シリーズ」ぶっちゃけ
・NHK教育「おかあさんといっしょ・あそびだいすき」遊び歌担当
・FC東京 初代スタジアムDJ など

■内容

1.俳優・声優になるまでの歩み
13歳でギターの弾き語りを始め、歌手を目指した少年時代。研究者を志して進学した大学。そして、声優養成所での学びからプロデビューへ。
石野さんが俳優・声優の道を歩むようになった経緯を、ご自身の言葉でお話しいただきます。

2.今、表現者として大切にしていること
さまざまな作品や表現の場に関わってこられた石野さんが、今、何を大切に活動されているのか。
仕事に向き合う姿勢や表現への思いを伺い、それぞれの仕事や人生にもつながる気づきを探っていきます。

3.参加者のみなさんとの質疑応答
お話を聴いて感じたこと、もっと知りたいこと、石野さんに聞いてみたいこと。
参加者のみなさんからのご質問にお答えいただきながら、学びを深めていきます。

■開催日時
2026年10月8日(木)18:30-20:00

■開催方法
リアル会場開催&オンライン同時開催

■会場
株式会社コーチビジネス研究所
東京都千代田区富士見1-3-11 富士見デュープレックスビズ702号室

■参加費 無料

■学びの会合終了後の懇親会を開催予定です。
懇親会は、3500円~4000円の参加費となります。

■お申込み
こちらのPeatixよりお願いします。

第31回学びの会合 (経営者のための廣器会)

https://peatix.com/event/5195277

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レポーター紹介

坂本 樹志

株式会社コーチビジネス研究所 顧問 CBL認定コーチ 中小企業診断士
広島県出身。大学卒業後、大手化粧品会社に入社。財務、商品企画開発、販売会社代表取締役、新規事業開発、中国上海・北京駐在、独資2社設立し総経理等を歴任。その後CBL認定コーチとなり、エグゼクティブコーチとして活動開始。『カウンセリング&コーチング クイックマスター(同友館)』『格闘するコーチング(かんき出版)』など著書・執筆多数

WEB構成

水野 昌彦

アイデアルブランズLLC 代表 ブランド・デザイナー 中小企業アドバイザー
美大卒業後プリンター・電子機器メーカー、独立デザイン事務所を経て自動車メーカーデザイン部でカーデザインに従事、エンブレムデザイン全般担当を契機としてブランディングに深く関与。ブランド体系構築をリーディング。2021年独立・法人化、代表に就任。「かんがえ方のデザイン」を提唱し中小企業のブランド・デザイン振興を支援している。

撮影

Jin-hitomi

インフラ系会社の購買部門で契約業務の他、経理・総務を歴任。日商簿記2級、ビジネス法務2級
パラレルキャリアで人物写真撮影(イベント、スナップ、スタジオ)、西洋占星術、ダンス(ヒップホップ、ロックダンス)など★魂の煌めきを照らす仕事★で元気とパワーを届けている。

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- 了 -
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